建設業の会社を設立する場合、設立した会社でスムーズに建設業許可をとるためにはいくつかの注意点があります。
この記事では、当事務所にご相談いただく事例のなかで最も多い、「自分で出資して自分が社長になるケース」を基準とし、会社設立後に建設業許可を取得することを見据えた場合の注意点について解説していきます。
目次
役員の構成
建設業許可でいう役員とは、株式会社の場合「取締役」、合同会社の場合「業務執行社員」のことをいいます。
この取締役や社員を決める際の注意点は次の2つです。
常勤役員等の要件を満たすこと
建設業許可の取得には、常勤役員等(経営業務管理責任者)の在席という要件があり、「建設業に関する経営経験が5年以上ある人が申請会社の役員として登記されている」必要があります。
自分が常勤役員等の要件を満たせない場合、設立してすぐ建設業許可を取得するには、設立の時点で常勤役員等になれる人を取締役に入れておくとスムーズです。
欠格要件に該当する人がいないこと
会社の役員のなかに欠格要件に該当する人がいる場合、建設業許可を取得することができません。
欠格要件には、「建設業法違反による行政処分」「禁固刑以上」「破産者」など様々なものがあります。本人に確認しにくいことかもしれませんが、許可取得を見据えてしっかり聴き取りをしておきましょう。
※出資額全体の5%以上の株主にも欠格要件の審査があります。
資本金の額
建設業許可の要件のひとつに「財産的基礎を有すること」というものがあります。
会社設立~第1期決算終了までの間に建設業許可の新規申請を行う場合、設立時資本金の額が基準とされている額よりも多ければ要件を満たします。
一般建設業許可の場合
設立時資本金500万円以上
特定建設業許可の場合
設立時資本金4,000万円以上
資本金500万円以下でも申請可能です
資本金が500万円以下であっても、設立した会社の銀行口座に500万円の預金残高があることを証明できれば、資本金が少なくても問題なく許可を取得することができます。
定款の目的
会社を設立する際、定款(ていかん)という書類を作成するのですが、この定款に記載した会社の事業目的が登記にも反映されます。
建設業許可は29業種に分類されていているので、まずはどの業種で建設業許可を取得したいのかを明確にします。
建設業許可の先によっては、この事業目的についても厳しい審査があり、例えば東京都の場合は「建設業」とだけ記載しても認められず、目的変更を行う旨の念書等の提出を求められます。
建設業の目的記載例
許可を取得する業種を具体的に記載するパターンと、あらゆる業種をカバーできるよう記載するパターンがあります。
その他の許認可も考慮する
建設業に関連の深いその他の許認可においても、会社の事業目的が適した内容であるかを確認されるので、取得する可能性があるものは記載しておきましょう。
当事務所がおすすめする目的
- 1.〇〇工事の請負、設計、施工
- 2.建築・土木・設備工事の請負、設計、施工
- 3.産業廃棄物収集運搬業
- 4.前各号に附帯関連する一切の事業
目的が記載される登記事項証明書は、誰でもいつでも見ることができるものなので、①では会社がメインとして取り扱う工事業種を記載し強みをアピールしています。
②では建設業29業種すべての業種の建設業許可に対応した文言を入れつつ、建築士事務所登録までカバーできる内容になっています。
③は、建設業許可新規申請のお客様から「産廃許可も取得したい」というご相談をいただくことが多いので入れています。
建設会社設立の注意点まとめ
建設業許可を見据えた会社設立の注意点を、「役員(株主)構成」「資本金の額」「事業目的」の3つにわけて解説しました。
建設業許可を見据えた建設会社の設立は、建設業に詳しい行政書士に相談することをおすすめします。
- 常勤役員等の要件を満たす人を取締役に入れる
- 役員及び5%以上の株主に欠格要件がないか確認
- 資本金500万円以上で一般許可の要件を満たす
- 資本金4,000万円以上で特定許可の要件を満たす
- 資本金で要件を満たさなくても一般許可なら残高証明でOK
- 必要に許認可に適した目的を定款に記載する