近年件数が増えている事業譲渡ですが、建設業においては「建設業許可」もしっかり承継されるかが重要なポイントです。
仲介業者等に相談して事業譲渡したものの、いざ承継してみたら建設業許可を引き継げなかったということにならないよう、建設業の事業譲渡、M&Aの際には許可の承継についても慎重に検討しましょう。
目次
譲受人は許可要件を満たせるのか
事業譲渡により建設業許可を承継する場合、まずはじめに「事業譲渡成立の時点で譲受人が建設業許可の要件を満たせるのか」を確認する必要があります。
要件の内容については、通常の建設業許可と同様で以下のとおりです。
- 常勤役員等が在籍している
- 専任技術者が在籍している
- 財産的基礎を有している
- 営業所に独立性がある
- 欠格要件に該当しない
- 社会保険に加入している
常勤役員等
建設業許可を受けるには、建設業における取締役等または個人事業主の経験が5年以上ある人が、申請企業の役員として常勤していなければなりません。
経営業務管理責任者に準ずる地位による経験、補佐者をつけて要件を満たす方法などもありますので、細かな要件については次のリンク先の解説記事をご覧ください。
専任技術者
建設業許可を受けようとする業種ごとに、その技術的要件を満たす「専任技術者」を営業所ごとに常勤で置く必要があります。
専任技術者になるには、業種ごとに「対応した資格保有者」または「一定以上の実務経験者」のみがなることができます。
その他の要件
財産的基礎、営業所の独立性、欠格要件、社会保険についてはこの記事では省略しますが、興味のある方は解説コラムをご覧ください。
すべての許可業種が承継される
建設業許可の承継は、許可を受けている建設業の一部の許可のみの事業承継は認められず、許可を受けているすべての業種を承継することになります。
また、逆に承継と同時に業種を増やすこともできないので注意が必要です。
例えば、譲渡人が土木施工管理技士を専任技術者として土木一式と水道施設工事業の許可を受けているが、譲受人には建設機械施工技士しか専任技術者になれる人がいないという場合、水道施設工事業の許可要件を満たさないため土木一式も含め許可の承継が認められないということになります。
承継できない業種は事前に廃業
上記のようなケースの場合、事業譲渡前に譲渡人側において水道施設工事業を一部廃業し、土木一式の許可だけを受けている状態にしておくというのが現実的な対策となります。
承継が認められるケース
承継が認められないケース
譲渡人に届出未提出がないこと
建設業許可を受けた事業者は、その許可行政庁に対し、年に1度の事業年度終了報告をはじめ、商号、所在地、役員、資本金等、建設業法において義務付けられている届出に漏れがない状態でないと許可の承継が認められないので、こちらも事前に確認が必要です。
事前の認可制である
許可の承継については、事前の認可を受けることで建設業の許可を承継することを可能にするという制度であり、法文にも「あらかじめ」と規定されています。
事業譲渡全体のスケジュールを把握し、事業譲渡の効力発生日から逆算して余裕をもって認可申請の準備を進めましょう。
認可申請の必要書類
建設業許可承継の認可申請においても、譲渡人、譲受人連名の認可申請書以外は、基本的に通常の新規申請と同じような書類を譲受人の立場で作成することになりますが、以下の書類には個別に用意する必要があります。
事業譲渡契約書
事業譲渡の事実を証明するため、譲渡契約書の写しを添付します。
認可申請の時点でこの契約書の写しが必要なのですが、譲渡の効力が発生した後に認可申請を行っても承継は認められないため、契約書における「契約日」と「効力発生日」を分けて考え、特に効力発生日の時期には注意をしましょう。
個人事業から法人成りの場合
個人事業で受けていた建設業許可を、法人成りに伴い法人に承継することも可能です。この場合は個人を譲渡人、法人を譲受人として交わした譲渡契約書の写しを添付します。
株主総会議事録等
事業譲渡は企業にとって重要な事項であるため、その承認の決議に係る書面の提出も求められます。
株主総会・社員総会の議事録、総社員・無限責任社員の同意書等については、譲渡人及び譲受人それぞれのものが必要となります。
許可承継後の許可番号
譲受人が承継後に使用する建設業許可番号は、譲渡人のものを引き続き使用することとされます。
ただし、譲受人がもともと建設業許可業者である場合は、譲受人が使用する許可番号を選択することができることになっています。
知事許可から大臣許可への承継
許可行政庁が都道府県知事から国土交通大臣に変更となる場合は、国土交通大臣許可番号が新たに付されます。
建設業者としての地位を承継する
建設業許可の承継とは、建設業の許可(更新を含む)を受けたことによって発生する権利と義務の総体としての地位を承継するということです。
したがって、譲受人は譲渡人と同じ地位に立つことになり、譲渡人の受けた法に基づく監督処分や経営事項審査の結果についても承継することになります。
許可の有効期間は承継されない
建設業許可の有効期間は5年間であり、許可を継続するには5年に一度更新申請を行い許可を受けなければならないのですが、この譲渡人が受けていた許可の有効期間は承継されず、譲受人の許可有効期間については、承継の日の翌日から起算して5年間となります。
罰則も承継されない
建設業者としての立場にかかわらず、罰則の構成要件を満たす違反行為を行った被承継人という法人(個人)そのものに対して刑罰を料すものであるため、刑罰については承継人には承継されません。
認可申請の手数料
建設業許可の認可申請については、審査手数料が不要です。通常の新規申請では知事許可の場合90,000円、大臣許可の場合150,000円かかる法定費用が不要なのも許可承継の大きな特徴といえます。
建設業の事業譲渡は行政書士に相談
建設業許可が絡む事業譲渡は、スタートの時点から建設業許可に強い行政書士に相談することをおすすめします。
実際に、M&A仲介業者に言われるがまま事業承継を進めたところ、譲受人が経営業務管理責任者の要件を満たしておらず許可の承継に失敗したという事例もあります。
事前認可が条件とされている制度なので、後から困って相談されても新規申請を検討する以外に方法はありませんので、事前の相談が大切です。
行政書士法人ストレートの実績
当社では、実際に事業譲渡による事前認可申請が認められ、建設業許可の承継をサポートした実績が多数あります。
事業譲渡に伴う建設業許可の承継については、行政書士法人ストレートにご相談ください。