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コラム

COLUMN
2021.10.21

【建設業法解説】現場代理人の選任等に関する通知

建設業法第19条の2では、工事現場に現場代理人を置く場合の注文者への通知について定めています。

建設工事の施工においては、請負人が工事現場に現場代理人を置くことができ、また、注文者が監督員を置くこともあります。

現場代理人や監督員は工事施工の進行にとって重要な働きをしていますが、場合によってはその権限がはっきりしないことがあり、それが紛争の原因となる例もみられます。

建設業法は、現場代理人や監督員の権限に関する事項や意見の申出方法について、それぞれ相手方にあらかじめ書面によって通知しなければならないものとすることを定めることにより、紛争の予防や適切な解決を目指しています。

条文をチェック

現場代理人の選任等に関する通知

第19条の2 請負人は、請負契約の履行に関し工事現場に現場代理人を置く場合においては、当該現場代理人の権限に関する事項及び当該現場代理人の行為についての注文者の請負人に対する意見の申出の方法(第三項において「現場代理人に関する事項」という。)を、書面により注文者に通知しなければならない。

2 注文者は、請負契約の履行に関し工事現場に監督員を置く場合においては、当該監督員の権限に関する事項及び当該監督員の行為についての請負人の注文者に対する意見の申出の方法(第四項において「監督員に関する事項」という。)を、書面により請負人に通知しなければならない。

3 請負人は、第一項の規定による書面による通知に代えて、政令で定めるところにより、同項の注文者の承諾を得て、現場代理人に関する事項を、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより通知することができる。この場合において、当該請負人は、当該書面による通知をしたものとみなす。

4 注文者は、第二項の規定による書面による通知に代えて、政令で定めるところにより、同項の請負人の承諾を得て、監督員に関する事項を、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより通知することができる。この場合において、当該注文者は、当該書面による通知をしたものとみなす。

工事現場とは

この法律でいう工事現場とは、工事目的物の敷地や現場事務所だけではなく、近傍で直接管理可能な一定の場所を含むものと解されます。

現場代理人とは

現場代理人とは、請負人の代理人として工事現場の運営・取締りなど、工事の施工に関する一切の事務を処理する人のことをいい、通常、工事現場に常駐することとされています。ただし、工事現場における運営等に支障がなく、かつ、発注者との連絡体制が確保されている場合には、現場代理人の常駐が必要とされないこともあります。

たとえば、「契約締結後、現場事務所の設置、資機材の搬入または仮設工事等が開始されるまでの期間、天災等により工事の全部の施工を一時中止している期間」や「橋梁、ポンプ、ゲート、エレベーター等の工場製作を含む工事であって、工場製作のみが行われている期間」などについては、現場代理人の工事現場における運営、取締りおよび権限の行使に支障がない場合に該当します。

工事施工に関する一切の事務とは

工事現場の保安・火災予防・風紀衛生等とともに、契約上の権利・義務に関する事項も含まれ、民法でいう代理人よりも広い範囲のことがらを任されていることになります。

本条1項は、このような現場代理人の権限と注文者が現場代理人の行為について請負人に意見を告げたい場合に、その申出の方法について、それらが注文者にとって明らかとなるよう書面によって注文者に通知するべきこととしたものです。

現場代理人の設置は義務ではない

条文には「現場代理人を置く場合」とあり、工事現場に現場代理人を置くことは義務とされていません。ただし、工事請負契約約款などにより個別に現場代理人を置くことが義務付けされているケースが多いので注意しましょう。

監督員とは

監督員とは、請負契約が内容どおりに履行できるように、注文者に代わって設計図書に従って工事が施工されているかどうかを監督する人のことです。

建設工事では、不適切な施工などによって暇疵が生じても、工事が完成してしまうと後から修繕することは、費用や手間の点から見て容易ではありません。そのため、監督員を置いて施工に立ち会わせ、工事が適正に施工されるよう監督させることとしています。

監督員を置いたときは、その氏名を注文者に通知します。2名以上の監督職員をおき、権限を分担させたときにはそれぞれの監督職員の有する権限の内容を、監督員に契約書にもとづく請負人の権限の一部を委任したときは当該委任した権限の内容を注文者に通知します。

監督員は、現場代理人とは異なり、工事現場に常駐しなくても任務を達成することができるものと解されます。

現場代理人の常駐義務緩和

現場代理人は、請負契約の的確な履行を確保するため、工事現場の運営、取締りのほか、工事の施工及び契約関係事務に関する一切の事項(請負代金額の変更・契約の解除等を除く)を処理する受注者の代理人であることから、発注者との常時の連絡に支障を来さないよう工事現場への常駐が義務づけられています。

しかしながら、昨今、通信手段の発達により、工事現場から離れていても発注者と直ちに連絡をとることが容易になってきていることにより、厳しい経営環境下における施工体制の合理化の要請にも配慮し、一定の要件を満たすと発注者が認めた場合には、例外的に常駐を要しないこととすることができるものとされました。

常駐を要しないと発注者が認めた場合

具体的にどのような場合に常駐義務を緩和するかについては、受注者から現場代理人に付与された権限の範囲や、工事の規模・内容等に応じた運営、取締り等の難易等を踏まえて発注者が判断すべきとされていますが、具体的な例をあげるとすれば、「工事の規模・内容について、安全管理、工程管理等の工事現場の運営、取締り等が困難なものでない現場であり、発注者又は監督員と常に携帯電話等で連絡をとれる場合」などがあげられます。

また、常駐義務の緩和に伴い、他の工事の現場代理人又は技術者等を兼任することも可能となったところではありますが、兼任を可能とする典型的な例としては、上記具体例のような場合を前提として、さらに以下の全てを満たす場合が考えられます。

  • 兼任する現場が少数である
  • 兼任する現場同士の距離が近い
  • 注文者等の求めに応じて現場にすぐ行ける

なお、上記の場合によっても、主任技術者・監理技術者の専任義務が緩和されるものではないことに留意は必要です。

現場代理人まとめ

  • 現場代理人を置くことは法令上の義務ではない
  • 現場代理人を置く場合は注文者に通知が必要
  • 現場代理人の役割は現場の運営・取締り等の一切の事務
  • 現場代理人は原則現場に常駐が求められている

公共工事については、発注機関が現場代理人についてルールを定めているケースがほとんどです。

発注機関によっては「継続的な雇用関係のある正社員でないと認めない」というケースや、「出向社員でも構わない」というケースがあり、その取扱いは異なります。

いずれにしても、工事を請負う側としては、現場代理人の配置につき注文者としっかり協議する必要があります。

配置技術者についてはこちら

【国土交通省】現場に配置される技術者の活用

行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

建設業特化の行政書士法人ストレートの代表行政書士。年間申請数は300件を超える。建設業者のみならず行政書士、他士業からも多くの相談を受けるプロが認める専門家。誠実、迅速な対応で建設業者の発展に貢献します。

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