建設業許可は譲渡することができます。
一昔前までは、たとえ法人成りだとしても許可を承継することができず、個人事業の許可を廃業して、法人で新規申請をする必要がありました。
許可の譲渡は、法人同士のM&Aに伴う場合はもちろん、法人成り、またはその逆の個人成りに伴う場合でも可能です。
今回は個人成りのケースでの許可承継について解説します。
目次
個人成りとは
個人成りとは、法人で営んでいた事業を個人事業に切り替えることです。
法人を個人に切り替えるメリットとして、まず思いつくのは社会保険加入義務がなくなることですね。
個人事業であれば一定の規模までは社会保険に加入する義務がないので、支出を抑えるために個人成りすることがあります。
また、法人の場合、たとえ社長でも役員報酬という月額給料制になり、自分で稼いだつもりのお金でもそれを自由に使えないというもどかしさもあります。
個人成りの注意点
個人成りは法律上なにも問題ありませんが、建設業者の場合は、営業上問題となるケースがあるので、特に以下の点を確認しましょう。
元請はいいと言っているか?
建設業法の規定ではないですが、法人にしか工事を発ないと決めている元請業者も多く存在します。
自分が取引している相手、これから仕事を受注したい相手が、個人事業に対しても発注してくれるのかを事前に確認しましょう。
社保を求められないか?
個人事業なら社保加入の義務がないというのと、建設現場に入るのに社保が必要というのはまったく別の話です。
建設業の現場では、社会保険に加入していないと現場に入れてもらえないという取り扱いも結構多いと聞きます。
社保の負担は大きいですが、こちらも事前に確認する必要がありますね。
経管・専技は誰ですか?
個人成りして個人事業主になる人は、法人の常勤役員等(経営業務の管理責任者)でしょうか?
法人の常勤役員等が個人事業主になる場合は問題ありませんが、常勤役員等が個人事業主と別の人の場合であり、個人事業主となる人が常勤役員等の要件を満たしていない場合、その人を個人事業における支配人にする必要があります。
専任技術者については支配人にする必要はありませんが、従業員である場合は常勤性の証明として社会保険に加入させないといけないので、個人事業にしたら社保が不要となると安易に考えないよう気を付けましょう。
個人への許可承継方法
建設業許可を法人から個人に承継するには、譲受人として個人が行政庁に認可申請を行います。
通常の新規申請とそこまでかわりはありませんが、譲渡契約が適正に交わされていること、個人事業の開業届が提出されていることが必要です。
譲渡契約書における効力発生日に許可が個人に移るよう、事前に申請を進めることになります。
許可承継後の法人について
建設業許可承継が完了したら、個人事業において建設業許可の要件を充足し続ける必要があります。
ここで注意しなければならないのは、建設業許可における常勤役員等(経営業務の管理責任者)と専任技術者は他社の代表取締役であってはならないということです。
たとえもう何もしない法人であっても、そのまま放置するわけにはいきません。
ここで必要となるのは次のいずれかの対応です。
- 代表取締役を別の人に変更する
- 代表取締役を複数人にして個人事業主を法人の非常勤役員扱いにする
- すぐに会社を解散して清算人を別の人にする
上記いずれかの方法により基本的には問題ないはずですが、まだまだ事例が少ないのでこれからの行政の対応を見ていきたい分野ではあります。
法人を休眠状態にすることで要件を満たすという考えもありますが、これは審査行政庁によって扱いが異なりそうです。
当社がこのケースの申請を神奈川にした件では、休眠は認められず代表取締役の変更手続きを譲渡の効力発生日直後に行いました。
事業譲渡は行政書士に相談
建設業の事業譲渡は、必ず事前に建設業許可に詳しい行政書士に相談しましょう。
税理士、弁護士だけでは判断できないことも多いマニアックな分野です。
行政書士法人ストレートは、事業譲渡に伴う建設業許可の承継について多くのご相談をいただいており、申請はどれも認可されています。
事業譲渡をご検討の方、まずはお早めに無料相談をご利用ください。