工事請負契約書の作成には印紙税もかかるため、節約のためにメールで済ませたいところですが、こうしたオンライン上でのやり取りに問題はあるのでしょうか?
結論から言うと、FAXやメールでの工事請負契約書の交付はできませんが、建設業法の基準をクリアした電子契約のシステムならば、工事請負契約をオンライン締結することが可能です。その理由について説明していきましょう。
うっかり建設業法違反となってしまわないよう、工事請負契約書の交付や記載事項のルールや印紙税節約を図る際の注意点について確認することが重要です。
この記事では、
- 工事請負契約書の交付や記載事項のルール
- 見積書はメールで交付してもいいのか?
- 印紙税節約を図る際の注意点
について、建設業専門の行政書士法人ストレートが解説します。(2023/5/10加筆)
目次
工事請負契約書のルール
建設業法第19条
- (建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。(以下省略)- 出典:建設業法|e-Gov法令検索
これは要するに、署名又は記名押印された書面の原本を、注文者と請負人それぞれに交付する必要があるということです。
FAX・メールでの注文書・請書のやりとりは、相手に注文書・請書のコピーが送信されることになるため、建設業法においては原則認められていません。
署名または記名押印された書面の原本の交付が義務付けられている理由としては、原本でなければ簡単に契約書の改ざんができてしまい、後々トラブルに発展する可能性があるためです。
建設工事請負契約書の記載事項14項目とは?
工事請負契約とは建物の完成を約束し、完成した仕事に対する報酬として対価を支払う契約のことで、契約に不明確・不完全な部分があるとトラブルの原因となる可能性があるため、建設業法では工事の内容や請負代金の額など、14の重要事項を契約書に記載することを定めています。
建設工事請負契約書に記載すべき14事項は次のとおりです。
①工事内容 ②請負代金の額 ③工事着手の時期及び工事完成の時期 ④請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法 ⑤当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め ⑥天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め ⑦価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更 ⑧工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め ⑨注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め ⑩注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期 ⑪工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法 ⑫工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容 ⑬各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金- ⑭契約に関する紛争の解決方法
見積書は相手が承諾すれば電子メールでの交付が可能
建設業法上、注文書・請書はFAXやメールでのやり取りができませんが、見積書であれば電子メールなどの電磁的方法での交付が可能です。
これについては、建設業法第20条3項新設に伴い、建設業法施行令・施行規則にもいくつかの条項が新設されています。
これらの条項を踏まえてわかりやすく言うと、電磁的方法の種類および内容を示した上で、相手方から承諾を得ることができれば、当該電磁的方法(電子メールなど)で見積書を交付できるということです。
例えば、電子メールでPDFファイルを送付するなら、その旨と添付ファイルの形式(PDF等)、バージョンを示したうえで承諾を得られれば、電子メールの送付による見積書の交付が可能になります。
- 3 建設業者は、前項の規定による見積書の交付に代えて、政令で定めるところにより、建設工事の注文者の承諾を得て、当該見積書に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該建設業者は、当該見積書を交付したものとみなす。
- 引用:建設業法|e-Gov法令検索
電子契約なら署名・押印は不要
工事請負契約書は、原本での取り交わしが義務付けられていると前述しましたが、国土交通省で定められた一定の基準をクリアした電子契約なら、署名又は押印がなくても締結することができます。(建設業法第19条3項)
一定の基準とは、具体的には以下の技術的基準のことをいいます。
- ①見読性の確保
- ②原本性の確保
詳細については、国土交通省のHP『建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン』をご覧ください。
これらの基準をクリアした電子契約のシステムならば、工事請負契約をオンライン締結することが可能です。
電子契約システムを導入する際は、建設業法の基準を満たしているかどうか、提供する事業者に確認しましょう。
請負契約書の印紙税節約における注意点
印紙税を節約するためにFAXやメールで契約をすることもあれば、書面の場合は次のような方法で契約を行う場合もあります。しかし、これらの方法は建設業法違反となるので注意が必要です。
- ①記名押印した請負契約書を1通作成→下請負人にその写しを交付する
- ②元請負人から注文書のみ発行→下請負人から注文請書を発行しない
建設業法第19条では「署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」と定められているので、署名又は記名押印した書面が相互に交付されていなければ、建設業法違反となってしまうのです。
印紙税を節約するためには、契約としての有効性が確保され、なおかつ印紙の購入や添付の手間が省ける電子契約が最適な方法と考えられます。
- 印紙税とは、契約書や領収書などの文書作成の際にその文書に課税される税金のことで、建設工事の請負契約書や注文請書は、印紙税法によって課税文書に定められています。課税対象となる書類に収入印紙を貼付し、それに消印を押すことで印紙税を納めたことを証明できます。課税文書となるのは署名や押印があるもので、署名や押印のない写しは課税文書とされていません。
工事請負契約書の決まりに関するまとめ
- 請負契約の際は、署名又は記名押印された書面の原本を注文者と請負人それぞれに交付しなければならず、メール・FAXでの注文書等のやりとりは認められない
- 国土交通省の定める技術的基準をクリアした電子契約のシステムでなら、オンライン上での締結が可能
建設業専門の行政書士事務所
行政書士法人ストレートは、建設業者サポートに特化した事務所です。
建設業許可申請・経営事項審査・工事入札参加は、相談する行政書士によってその結果が異なることが多くあります。
個人事業~上場企業まで、年間300件以上の手続き実績がある行政書士が対応いたしますので、是非、初回無料相談をご利用ください。
セカンドオピニオンも大歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
初回無料相談!
まずはお気軽にご相談ください
建設業許可、経営事項審査、公共工事入札参加は、
行政書士法人ストレートにお任せください!