工事現場では多くの業者が連携して作業を遂行しています。
元請業者は安全かつ計画的に工事を進めるために、施工を請け負う全ての業者の情報や施工範囲、技術者の氏名等を把握しなければなりません。
これらを1つにまとめたものを施工体制台帳といい、建設業法によって施工体制台帳の作成が義務付けられています。
この記事では、
- 施工体制台帳とは?
- 作成対象となる工事と記載する業者の範囲
- 同時に必要となる施工体系図について
- 施工体制台帳の保存義務と期間
- 施工体制台帳の記載事項と添付書類
について、建設業専門の行政書士法人ストレートが解説します。
目次
どんな工事で何のために施工体制台帳を作成するのか?
施工体制台帳とは何か?作成する目的と作成対象となる工事、記載する業者の範囲、そして同時に作成が必要な施工体系図について説明していきましょう。
施工体制台帳とは何か
元請業者は、安全かつ計画的に工事を進めるため現場の施工体制について把握する必要があります。これらを1つにまとめた安全書類を「施工体制台帳」といい、建設業法第24条の8によって施工体制台帳の作成は義務付けられています。
施工体制台帳には次の内容を記載します。
- 工事を請け負う全ての業者名
- 各業者の施工範囲
- 工期
- 主任技術者・監理技術者名
詳細は後述します。(クリックまたはタップでジャンプします)
施工体制台帳の作成目的
施工体制台帳の作成を通じて、
- 品質・工程・安全等施工上のトラブル発生防止
- 不良・不適格業者の参入、建設業法違反(一括下請負等)の発生防止
- 安易な重層下請による生産性の低下の防止
を図ることが目的とされています。
施工体制台帳の作成対象となる工事
施工体制台帳の作成をしなければならない工事は次のとおりです。
- ①公共工事の場合、発注者から直接請け負った建設工事に関して下請契約を締結したとき
- ②民間工事の場合、発注者から直接請け負った建設工事に関して締結した下請契約の総額が4,500万円(建築一式工事では7,000万円)以上の場合
公共工事である場合、下請契約の金額に関わらず、施工体制台帳を作成する必要があります。
また、公共工事では作成した施工体制台帳の写しを発注者へ提出する義務があります。
- 下請金額を算定する時、消費税等は含めますが、元請業者から資材の無償提供を受けた場合や、測量業者との委託契約などの建設工事の請負契約金額ではないものは含めません。
施工体制台帳に記載する業者の範囲
施工体制台帳に記載すべき下請負人の範囲は、建設工事の請負契約における全ての下請業者となります。一次下請に限らず、二次、三次やそれ以下の下請業者も含めます。
また、下請業者が無許可業者であっても、建設工事の請負契約を締結している以上は記載の対象です。
もっとも、施工体制台帳に記載する業者は建設工事の請負契約を締結した業者のみです。
法律上、建設工事に該当しない現場警戒業務、調査測量業務や資材購入などの契約は記載対象ではありませんが、発注者から記載を求められることもあります。
施工体制台帳の作成対象の工事では施工体系図も必要
施工体制台帳を作成する工事においては、元請業者が施工体系図を作成する必要があります。
施工体系図とは、各下請人の施工分担関係が一目で分かるように作成された図のことです。
施工体系図は工事の期間中、民間工事では工事関係者が見やすい場所に、公共工事では工事関係者及び公衆が見やすい場所に掲示することが義務付けられています。
また、工事中に下請け業者に変更があった場合、施工体系図の表示も変更しなければなりません。
なお、施工体系図は目的物の引き渡しをしたときから10年間保存する必要があります。
施工体制台帳の保存義務について
施行体制台帳は、建設工事の目的物を発注者に引き渡すまでの間、工事現場に備え置かなければなりません。
また、建設工事の目的物の引き渡し後、一部の書類を営業所に備え置く帳簿に移し替えて5年間または10年間の保存が義務付けられています。
施工体制台帳に記載する事項と添付書類
施工体制台帳に記載する事項
施工体制台帳には、作成建設業者の許可に関する事項、請け負った建設工事に関する事項、下請負人に関する事項、健康保険等の加入状況、外国人建設就労者の従事の状況等を記載しなければなりません。
元請負人に関する事項 下請負人に関する事項 ●建設業許可の内容 ※すべての許可業種
●健康保険等の加入状況
●建設工事の名称・内容・工期
●発注者との契約内容(発注者の商号、契約年月日等)
●発注者が置く監督員の氏名等
●元請業者が置く現場代理人の氏名等
●配置技術者の氏名、資格内容、専任・非専任の別
●従事する者の氏名等
●外国人材の従事の状況●商号・住所
●建設業許可の内容 ※請け負った工事に係る許可業種
●健康保険等の加入状況
●下請契約した工事の名称・内容・工期
●下請契約の締結年月日
●注文者が置く監督員の氏名等
●現場代理人の氏名等
●配置技術者の氏名、資格内容、専任・非専任の別
●従事する者の氏名等
●外国人材の従事の状況出典:国土交通省関東地方整備局「施工体制台帳の作成②(記載内容と添付書類)」をもとに作成
施工体制台帳に添付すべき書類
施工体制台帳は、作成して完了というわけではありません。
元請業者の資料のみならず、下請業者から交付を受ける資料もあるので、添付すべき書類を忘れないように気を付けましょう。
添付書類 注釈 発注者との契約書の写し 下請負人が注文者との間で締結した契約書の写し(注文・請書及び基本契約書又は約款等の写し) ※民間工事の場合で、作成建設業者が注文者となる下請契約以外の下請契約については、請負代金額を除いたもの(元請⇔一次間の契約書には請負代金額の記載が必要です) 元請負人の配置技術者が監理技術者資格を有することを証する書面 ※現場配置の専任を要する工事のときは、監理技術者資格者証の写しに限る 監理技術者補佐を置くときは、監理技術者補佐資格を有することを証する書面 専門技術者を置いた場合は、その者の資格を証明できるものの写し(国家資格等の技術検定合格証明書等の写し) 監理技術者、監理技術者補佐及び専門技術者の雇用関係を証明できるものの写し(健康保険証等の写し)下請負人が注文者との間で締結した契約書の写し(注文・請書及び基本契約書又は約款等の写し) ※民間工事の場合で、作成建設業者が注文者となる下請契約以外の下請契約については、請負代金額を除いたもの(元請⇔一次間の契約書には請負代金額の記載が必要です) 元請負人の配置技術者が監理技術者資格を有することを証する書面 ※現場配置の専任を要する工事のときは、監理技術者資格者証の写しに限る 監理技術者補佐を置くときは、監理技術者補佐資格を有することを証する書面 専門技術者を置いた場合は、その者の資格を証明できるものの写し(国家資格等の技術検定合格証明書等の写し) 監理技術者、監理技術者補佐及び専門技術者の雇用関係を証明できるものの写し(健康保険証等の写し) 出典:国土交通省関東地方整備局「施工体制台帳の作成②(記載内容と添付書類)」をもとに作成
施工体制台帳の記載内容と業者の記載範囲についてのまとめ
- 施工体制台帳には工事を請け負う全ての業者名・各業者の施工範囲・工期・主任技術者・監理技術者名を記載する
- 施工体制台帳の作成対象となる工事では施工体系図の作成も必要
- 施行体制台帳は5年間または10年間の保存義務がある(施工体系図は10年間)
- 施工体制台帳に記載する業者は建設工事の請負契約を締結した業者のみだが、発注者によっては別途記載を求められることもある
国土交通省のwebサイトでは、工事現場の施工体制を確認できるよう「施工体制台帳のチェックリスト」を公開しているので活用するといいでしょう。
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