建設工事の請負については、下請代金の支払いは建設業法の規定に従い、「1か月以内」かつ「できる限り短い期間内」に支払う必要があります。特定建設業者の場合、さらに厳しいルールが適用されることとなっています。
下請代金の支払期日、特定建設業者のルール、支払手段について説明していきましょう。
この記事では、建設業法における下請代金の支払期日について、建設業専門の行政書士法人ストレートが解説します。
目次
下請代金の支払期日はいつまでなのか?
下請負人への代金支払いのルールは建設業法(第24条の3)に従います。
元請負人は、支払対象となる工事を施工した下請負人に対してその分の下請代金を「1か月以内」かつ「できる限り短い期間内」に支払わなければなりません。
このルールは、注文者から工事が完成した後に支払いを受けたときや、請負代金の出来形部分に対する支払いを受けたときも同様に適用されます。
下請代金が支払われないと下請負人の経営状況に関わる上、手抜工事や労災事故等を引き起こしかねません。
下請代金の支払期日に関する規定は、適正に代金が支払われることによる適正な施工の確保と、下請負人の利益保護のために設けられているのです。
また、前払い金に関してもこのルールは適用されます。
資材購入等の費用確保のために元請負人が注文者から前払いを受けたら、下請負人に対しても工事着手に必要な費用を前払い金として支払うよう努める必要があります。
- 第24条の3(下請代金の支払)第1項に違反している事実があり、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第19条の規定に違反していると認めるときは、公正取引委員会に対して措置請求を行うことができるとされています。
- 参考:国土交通省HP「建設業法令遵守ガイドライン(第9版)」
特定建設業者の支払期日のルールはより厳格
特定建設業者にはより厳格なルールが適用されます。ルールの対象外となる場合や、下請工事完成から下請代金支払までの流れについて解説していきましょう。
特定建設業者に対してのルール
特定建設業者にはより厳しいルールが定められています。
特定建設業者は、注文者から支払いを受けていなくても、下請負人からの工事引渡しの申出日から50日以内に下請代金を支払わなければなりません。
ただし、特定建設業者と契約をした下請負人が「特定建設業者」または「資本金額が4,000万円以上の法人」である場合はルールの対象外です。ルールを守らなかった場合、特定建設業者は支払遅延として遅延利息を支払わなければいけません。
- 建設業許可の一種。1件につき合計4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の建設工事を下請に出す場合に取得が義務付けられた許可のことです。
下請工事から下請代金支払までの流れを把握しておくこと
特に特定建設業者は下請代金の支払いについて、元請負人と特定建設業者の2つの義務を負うため、「注文者から出来形払いや完成払いを受けた日から1か月以内」もしくは「下請負人の引渡し申出があった日から50日以内」のいずれか早いほうで下請代金を支払わなければなりません。
毎月の締日と支払日を設定する場合、下請負人から工事引渡しの申出があった日から50日を超えてしまうこともあるので注意しましょう。
下請代金は現金で支払う
下請代金の支払手段について、令和2年10月施行の改正建設業法により、現金で支払う配慮をするよう規定が設けられています。
それまでも、「下請代金の支払いはできるだけ現金払い」と周知されていましたが、この時の改正によって建設業法にその旨の条文が新設されました。(改正前は条文にはありませんでした)また、建設業法令遵守ガイドライン(国交省HP)にも次のような記載があります。
- 「下請代金を手形で支払う際も、現金化にかかる割引料等のコストや手形サイトに配慮をすることが必要」
なお、現金払いの義務化ではなく、あくまでも「適切な配慮」を求めています。いくら義務でないとはいえ、ルールは守りたいところです。ちなみに、「現金」とはすぐに現金化できるものを指しており、キャッシュはもちろん、銀行振込や小切手も含まれます。
建設業法における下請代金の支払期日についてまとめ
- 支払対象となる工事を施工した下請負人に対して相当分の下請代金を「1か月以内」かつ「できる限り短い期間内」に支払うことが決まっている
- 特定建設業者は、下請負人から引渡しの申出があった日から50日以内に下請代金を支払う必要がある(ただしルールの対象外となる条件あり)
- 下請代金はできる限り現金で支払うよう配慮する
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