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2023.03.13

専任技術者とは?必要な資格と実務経験&他の技術者との違いについて

建設業許可を受けるためには、建設業29業種のうち許可を取得する業種ごとに一定以上の技術知識がある人を営業所に常勤させなければならないという要件があります。

この常勤の技術者のことを「専任技術者」といい、専任技術者になるには国土交通大臣に個別に認められた人と、各業種に対応した「資格者」または「実務経験者を有する人」でなければなりません。

専任技術者の要件と、他の役職との兼務の可否、主任技術者や管理技術者との違いについて説明していきましょう。

この記事では、専任技術者の役割・要件と主任技術者との違いについて、建設業専門の行政書士法人ストレートが解説します。

専任技術者は「専任かつ常勤」が求められる

専任技術者になるには、専任かつ常勤、そして常勤性を証明できる書類が必要です。

それぞれの具体的な内容について解説していきましょう。

「専任かつ常勤」とは?

専任技術者は、許可を有する営業所に常勤していなければいけません。

「専任かつ常勤」が求められ、その営業所に常勤して専らその職務に従事することが必要で、雇用契約等により雇用主と継続的な関係を有していることが求められています。

したがって、以下のような場合は原則として専任とは認められません。

  • ①専任技術者の住所が、その営業所所在地から遠距離で通勤不可能な場合
  • ②他の法令により選任が必要とされている者(専任の宅地建物取引士や管理建築士)が専任技術者と兼ねる場合
  • ③専任技術者と工事現場の主任技術者または監理技術者とは兼務することができない(営業所を離れて工事現場に出ることはできないため)

常勤性の証明書類は基本的に健康保険証の写し

基本的には健康保険証の写しにより確認します。

しかし、後期高齢者や健康保険組合の保険証デザイン等により、健康保険証に許可申請をする会社の名称が記載されていない場合は住民税特別徴収税額の通知書や、役員であれば法人税申告書の役員報酬明細等で証明をすることになります。

専任技術者に必要な資格一覧

建設業許可29業種それぞれに対応する資格があるので、保有している資格でどの業種の許可を申請することができるのか、また、許可を取りたい業種にはどの資格が必要なのかをしっかり確認しましょう。

※1 資格を用いて特定建設業許可の専任技術者になる場合は、どの業種においても1級資格者または技術士が必要となります。
※2 2級技能士の場合は、その合格後3年以上の申請業種に関する実務経験照明が必要となります。
建設業許可の種類 必要な国家資格
土木工事業

1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木)、1級建設機械施工技士、2級建設機械施工技士、技術士(※)

※【技術史の部門・科目】:建設、農業「農業農村工学」、水産「水産土木」、森林「森林土木」

建築工事業 1級建築士、2級建築士、1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(建築)
大工工事業 1級建築士、2級建築士、木造建築士、1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(躯体・仕上げ)、技能士(建築大工・型枠施工)
左官工事業 1級建築施工管理技士、2級土木施工管理技士(仕上げ)、技能士(左官)
とび土工工事業

1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(躯体)、1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木・薬液注入)、1級建設機械施工技士、2級建設機械施工技士、登録基礎ぐい工事、地すべり防止工事士(登録後実務経験1年)技術士(※)、技能士(※)

※【技術士部門】:建設、農業「農業農村工学」、水産「水産土木」、森林「森林土木」

※【技能士の検定職種】:ウェルポイント施工、とび、とび工、型枠施工、コンクリート圧送施工

石工事業

1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(仕上げ)、1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木)、技能士(※)

※【技能士の検定職種】:ブロック建築、ブロック建築工、コンクリート積みブロック施工、石工、石材施工、石積み

屋根工事業

1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(仕上げ)、1級建築士、2級建築士、技能士(※)

【技能士の検定職種】:建築板金(ダクト板金作業・内外装板金作業)、板金(建築板金作業)、板金工(建築板金作業)、かわらぶき、スレート施工

電気工事業 1級電気工事施工管理技士、2級電気工事施工管理技士、第1種電気工事士、第2種電気工事士(取得後実務経験3年)、電気主任技術者(取得後実務経験5年)、技術士(建設・電気電子)、建築設備士(実務経験1年)、1級設備士(実務経験1年)
管工事業

1級管工事施工管理技士、2級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者(取得後実務経験1年)、建築設備士(実務経験1年)、1級設備士(実務経験1年)、技能士(※)、技術士(※)

【技能士の部門・科目】:空気調和設備配管、冷凍空気調和機器施工、給排水衛生設備配管、配管(建築配管作業)、配管工、建築板金(ダクト板金作業)

※【技術士の部門】機械(流体工学または熱工学)、上下水道、衛生工学

タイル・れんが・ブロック工事業

1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(躯体・仕上げ)、1級建築士、2級建築士、技能士(※)

※【技能士の検定職種】:タイル張り、タイル張り工、築炉、築炉工、れんが積み、ブロック建築、ブロック建築工、コンクリート積みブロック施工

鋼構造物工事業 1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(躯体)、1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木)、1級建築士、技術士(建設「鋼構造及びコンクリート」)、技能士(鉄工「製罐作業・構造物鉄工」、製罐)
鉄筋工事業

1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(躯体)、技能士(※)

※【技能士の検定職種】

鉄筋組立、鉄筋施工(鉄筋施工図作成作業及び鉄筋組立て作業の両方に合格)

舗装工事業 1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木)、1級建設機械施工技士、2級建設機械施工技士、技術士(建設「鋼構造及びコンクリート」)
しゅんせつ工事業 1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木)、技術士(建設「鋼構造及びコンクリート」、水産土木)
板金工事業

1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(仕上げ)、技能士(※)

※【技能士の検定職種】:建築板金(ダクト板金作業・内外装板金作業)板金(建築板金作業)、板金工(建築板金作業)、工場板金・板金・板金工・打ち出し板金

ガラス工事業 1級建築施工管理技士、2級土木施工管理技士(仕上げ)、技能士(ガラス施工)
塗装工事業

1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装)、1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(仕上げ)、技能士

※【技能士の検定職種】:塗装、木工塗装、木工塗装工、建築塗装、建築塗装工、金属塗装、金属塗装工、噴霧塗装、路面標示施工

防水工事業

1級建築施工管理技士、2級土木施工管理技士(仕上げ)、技能士(防水施工)

 内装仕上工事業

1級建築士、2級建築士、1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(仕上げ)、技能士(※)

※【技能士の検定職種】:畳製作、畳工、内装仕上げ施工、カーテン施工、天井仕上げ施工、床仕上げ施工、表装、表具、表具工

機械器具設置工事業

技術士(機械)

熱絶縁工事業

1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(仕上げ)、技能士(熱絶縁施工)

電気通信工事業

1級電気通信工事施工管理技士、2級電気通信工事施工管理技士、技術士(電気電子)、電気通信工事主任技術者(実務経験5年)

造園工事業

1級造園施工管理技士、2級造園施工管理技士、技術士(建設・森林)、技能士(造園)

さく井工事業

技術士(上下水道「上水道及び工業用水道」、地すべり防止工事士(登録後実務経験1年)、技能士(さく井)

建具工事業

1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(仕上げ)、技能士(※)

※【技能検定の場合の検定職種】:建具製作、建具工、木工(建具制作作業)、カーテンウォール施工、サッシ施工

水道施設工事業

1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木)、技術士(※)

※【技術士の部門・科目】:上下水道、衛生工学(水質管理・廃棄物/資源循環または汚物処理)

消防施設工事業

甲種消防設備士、乙種消防設備士

清掃施設工事業

技術士(衛生工学(水質管理)

解体工事業

1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(建築・躯体)、1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(土木)、技術士(建設)、解体工事施工技士、技能士(とび・とび工)

※【登録解体工事講習等が必要となるケース】:技術士、または合格年度が平成27年度より前の土木施工管理技士、建築施工管理技士により解体工事業の専任技術者になる場合は、登録解体工事講習の受講、または、合格後1年以上の解体工事に関する実務経験が必要となります。

【国土交通省】資格一覧表はこちら

専任技術者として認められるのに必要な実務経験

前記(専任技術者に必要な資格一覧)のような資格者がいない場合でも、申請業種につき一定期間以上の実務経験を有することを証明できる人は専任技術者になれます。

実務経験は1業種につき原則10年以上必要とされていますが、指定学科卒業の学歴がある人は、次のとおりの実務経験期間で専任技術者として認められます。

  • 指定学科の高校卒業後5年以上
  • 指定学科の大学卒業後3年以上

専任技術者に認められる指定学科一覧

業種 指定学科
土木工事業・舗装工事業 土木工学、都市工学、衛生工学または交通工学に関する学科
建築工事業・大工工事業・ガラス工事業・内装仕上工事業 建築学または都市工学に関する学科
左官工事業・とび土工工事業・石工事業・屋根工事業・タイルれんがブロック工事業・塗装工事業・解体工事業 土木工学または建築学に関する学科
電気工事業・電気通信工事業 電気工学または電気通信工学に関する学科
管工事業・水道施設工事業・清掃施設工事業 土木工学、建築学、機械工学、都市工学または衛生工学に関する学科
鋼構造物工事業・鉄筋工事業 土木工学、建築学または機械工学に関する学科
しゅんせつ工事業 土木工学または機械工学に関する学科
板金工事業 建築学または機械工学に関する学科
防水工事業 土木工学または建築学に関する学科
機械器具設置工事業・消防施設工事業 建築学、機械工学または電気工学に関する学科
熱絶縁工事業 土木工学、建築学または機械工学に関する学科
造園工事業 土木工学、建築学、都市工学または林学に関する学科
さく井工事業 土木工学、鉱山学、機械工学または衛生工学に関する学科
建具工事業 建築学または機械工学に関する学科

実務経験の証明方法

実務経験を証明のポイントは次の2点です。

①経験を積んだ企業がその業種の工事を請負っていたことの証明

経験を積んだ事業者が、実務経験を証明しようとしている業種の建設業許可を受けている期間については、基本的にその許可の通知書の写しを提出できれば認められます。

建設業許可を有していない期間の実務経験証明には、次のような資料が期間通年分必要となります。

  • 工事請負契約書
  • 注文書、発注書等
  • 請書または請求書+入金が確認できる通帳

期間通年分の証明に必要な資料の量は、許可行政庁により異なります。

例えば、東京都や埼玉県の場合は各月1件以上または工期で必要期間分を用意する必要がありますが、神奈川県や千葉県の場合は年1件で1年分が認められています。

②経験を積んだ企業に常勤で在籍していたことの証明

経験を積んだ事業者が、厚生年金保険に加入していた場合は、年金事務所で年金記録(被保険者記録照会回答票)を取り寄せ、そこの証明する会社名が記載されていれば在席とみなされます。

厚生年金保険に未加入の事業者における在席確認については、給与支払いの実態、日報等により証明することになりますがハードルはとても高いです。

法人の役員、個人事業主として経験を積んだ場合は、厚生年金保険の履歴がなくても、確定申告書により証明することができます。

ただし、役員報酬が少なくとも年間120万円は計上されていないと難しいです。

また、個人事業の確定申告書において、個人の営業の他に給与所得が記載されている場合、その申告書によって丸1年分の経験は認められないので注意しましょう。

実務経験による申請が認められない2つの業種

29業種のうち、

  • 電気工事業
  • 消防施設工事業

の2つは実務経験での許可取得が認められず、必ず資格者が必要です。

なぜなら、電気工事士法・消防法においてそもそも資格がなければ工事を施工することができないと定められているためです。

専任技術者と他の役職との兼務の可否

専任技術者と主任技術者、または経営業務管理責任者との兼任の可否について解説していきましょう。

専任技術者と主任技術者の兼務は例外的に認められることもある

原則として、専任技術者が主任技術者と兼務することはできません。

ただし、例外的に専任技術者と工事現場の主任技術者または監理技術者とは兼務することができる要件があります。

専任技術者と主任技術者を兼務するための要件は次のとおりです。

  • ①専任技術者がおかれている営業所で契約締結した建設工事であること
  • ②それぞれの職務を適正に遂行できる程度に近接した工事現場であること
  • ③営業所と工事現場が常時連絡を取りうる体制にあること
  • ④建設工事が主任技術者の選任配置を必要とする工事でないこと

しかし、許可行政庁によっては、専任技術者が主任技術者になることを認めていない場合があるので気を付けなければなりません。

経営業務管理責任者との兼任は可能

専任技術者が同一会社の経営業務管理責任者と兼任することは問題ありません。

しかし、他社の専任技術者や経営業務管理責任者との兼任は当然できないので注意しましょう。

専任技術者・主任技術者・監理技術者の違い

専任技術者と主任技術者・監理技術者の3つの技術者の違いは、わかりやすく言ってしまえば「どこで仕事をするか」にあります。

また、主任技術者と監理技術者の違いは建設工事の規模の大小によってきます。

それぞれの違いを説明していきましょう。

専任技術者=営業所で請負契約の適正な締結や履行をサポート

専任技術者は建設業許可取得の重要な要件の1つで、各営業所ごとに設置しなければなりません。

建設工事に関する請負契約を適正に締結し、その履行を確保することが専任技術者の役割なので、一定の資格や経験を持った技術者を専任で各営業所に配置することが求められています。

専任技術者の設置の目的は営業所の許可業種ごとの技術力を確保することにあり、営業所において

  • 工法の検討
  • 注文者への技術的説明
  • 建設工事の見積作成
  • 入札
  • 請負契約

などの締結等が適正に行われるよう、技術的なサポートをします。

専任技術者を工事現場に配置することは認められていませんが、工事現場に出る技術者に対しては建設工事の施工が適正に行われるよう指導監督をする役割もあります。

主任技術者=工事現場の技術上の管理をするポジション

建設業法において、建設業許可を受けた建設業者が工事を施工するには、その規模や元請・下請に関係なく工事現場に主任技術者を配置しなければならないと定められています。

主任技術者は、工事現場の技術上の管理を任されるポジションなので、次のいずれかに該当する人しかなることができません。

  • 1級・2級国家資格者
  • 指定学科卒業+実務経験者
  • 10年以上の実務経験者
  • 登録基幹技能者

主任技術者になることのできる資格や経験は、営業所の専任技術者と同一の内容とされています。

監理技術者=特定建設業許可が必要な工事現場に配置

元請業者として発注者から直接請負った工事につき、下請業者に4,000万円以上発注(建築一式工事の場合は6,000万円以上)する場合、特定建設業許可が必要となるとともに、主任技術者に代えて監理技術者を配置しなければなりません。

役割としては、主任技術者との違いはありません。

監理技術者は、元請業者の立場で施工計画・工程・品質・その他技術上の管理及び施工に従事する者の技術上の指導監督を任されるため、次のとおり主任技術者よりも厳しい要件が定められています。

  • 1級国家資格者
  • 国土交通大臣認定者
  • 指導監督的実務経験者(指定建設業7業種を除く)

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行政書士 大槻 卓也
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建設業特化の行政書士法人ストレートの代表行政書士。年間申請数は300件を超える。建設業者のみならず行政書士、他士業からも多くの相談を受けるプロが認める専門家。誠実、迅速な対応で建設業者の発展に貢献します。

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