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コラム

COLUMN
2023.05.01

建設業法違反となる取引とは?適正取引について行政書士が解説

建設業は、インフラ整備や災害対応など、安心して暮らせる社会を作るための重要な役割を担っています。

そして、建設工事はその規模に応じて複数の建設業者が施工に関わるという特徴があり、適正な施工の確保、建設業の健全な発展を実現するためには適正な請負契約が求められます。

そのため、建設業法や建設業法遵守ガイドライン等では、契約手続きやその過程についてルールを定めています。したがって、建設業法違反となる取引条件の注意点について把握しておくことが大切です。

この記事では、

  • 建設業法違反となる取引条件についての注意点
  • 適正な取引のための見積・契約・請負代金支払いのルールの確認

など、建設業者が遵守すべき適正な取引のルールについて建設業専門の行政書士法人ストレートが解説します。

建設業法違反となる取引条件に注意

建設業法違反とならないよう、建設業者間での工事請負契約に関する取引の条件について注意点を確認しておきましょう。

①不明確な見積条件・短い見積提出期限

見積条件の提示にあたって、元請負人が下請負人に対して具体的内容を提示しない場合や、工期等に影響を及ぼす地盤沈下などの事象が発生するおそれがあると知りつつ、その情報を提供しないまま契約した場合は建設業法違反になるおそれがあります。

また、元請負人が下請負人の見積りを行うために必要な一定の期間を設けなかった場合は、建設業法違反になります。

建設業法における見積期間の規定についての詳細はこちら

チェックポイント

  • 工事内容、工事着手及び工事完成の時期、支払時期及び方法等の具体的内容の見積条件が提示されているか
  • 工事1件の予定価格の金額に応じた見積期間が設けられているか

【目指すべき取引】適切な見積条件・期間になっているか確認

具体的な施工条件や業務分担を明確にするため、書面による見積条件の提示と見積内容について十分に協議する期間が取られていることを確認しましょう。

また、適切な水準の賃金を確保できるような労務費や市場価格を参考にした材料費、工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数が明らかになっているかなど、工事内容に応じた適切な見積りとなっていることを確認します。

②口頭契約や契約書交付が着工後になっていないか

工事契約は着工前に書面で行う必要があり、口頭契約などの書面を交わさない契約及び工事着工後に契約書面を交付する行為は、建設業法違反になります。

契約書面には建設業法で定める一定の事項を記載することが必要であり、必要事項を満たさない契約書面を交付した場合は、建設業法違反になります。

建設工事の請負契約書を交付するタイミングについての詳細はこちら

チェックポイント

  • 工事着工前に契約を書面で交わしているか
  • 書面で交わされた契約内容は具体的な内容となっているか

【目指すべき取引】工事の着工前に具体的な契約内容を記載した書面を交わす

建設業法で定められた必要事項も含め、元請負人と下請負人の間で合意された事項を記載した契約書面を工事着工前に交わしましょう。

契約内容を変更する場合、工事内容、工期、請負代金額の精算方法などについて協議し、変更内容を記載した書面を改めて交わしましょう。

③契約工期が通常よりもかなり短い期間になっていないか

建設工事の請負契約締結にあたって、通常よりもかなり短い期間を工期とする請負契約を締結した場合は建設業法違反になるおそれがあります。

下請負人の責めに帰すべき理由がなく、当初契約で定めた工期が延長になり、工事費用が増加したにも関わらず、下請負人からの協議に応じず、書面による変更契約を締結しなかった場合は建設業法違反になります。

工期を適正化するための基準についての詳細はこちら

チェックポイント

  • 通常よりもかなり短い期間を工期とした契約をしていないか
  • 工期などの契約内容が変更になった場合に、元請負人と下請負人は、双方対等な立場において協議を行っているか

【目指すべき取引】工事や契約の内容を考慮した上で適正な工期を決定する

工事内容、請負金額などの契約内容を総合的に検討し、適正な工期で請け負うことができるのかを確認してから契約します。

また、工期の延長やそれに伴う工事費用の増加が発生した際に、元請負人としっかり協議できるよう、当初の契約で協議方法などを明確に定めておきましょう。

④契約金額が協議なく一方的に決められていないか

元請負人が下請負人と十分な協議をせず、又は協議に応じず、一方的に請負代金の額を決定して契約を締結させた場合は、建設業法違反になるおそれがあります。

元請負人が地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない請負代金で下請負人と契約した場合は、建設業法違反になるおそれがあります。

チェックポイント

  • 協議することなく一方的に提示された請負代金で契約をしていないか
  • 通常必要と認められる原価に満たないような請負代金の契約となっていないか

【目指すべき取引】様々な要因を反映した請負代金となるよう協議して契約

施工責任範囲、工事の難易度、施工条件等を反映した合理的な請負代金とな
るように協議のうえ契約しましょう。

建設業者が義務的に負担しなければならない法定福利費や労働災害防止対策に要する経費などが見積書において内訳明示され、それらの経費を尊重した請負代金であることを確認のうえ契約しましょう。

⑤やり直し工事費用を一方的に押しつけられていないか

やり直し工事となった責任や費用負担を明確にしないまま、元請負人が下請負人に費用を一方的に負担させた場合は、建設業法違反になるおそれがあります。

また、下請負人の責めに帰すべき理由がないにも関わらず、元請負人が下請負人にやり直し工事の費用を一方的に負担させた場合は、建設業法違反になるおそれがあります。

建設業法違反となるやり直し工事の詳細はこちら

チェックポイント

  • やり直し工事が発生した場合の責任や費用負担について、契約書面において明示されているか
  • やり直し工事について、下請負人の責めに帰すべき理由がないにも関わらず、一方的に費用負担を求められていないか

【目指すべき取引】やり直し工事が発生した場合の取り決めを協議して契約書に記載する

予めやり直し工事が発生した場合の取り決めについて協議しておき、合意した内容については責任関係を明確にするために契約書面へ記載しましょう。

やり直し工事の責任や発生経緯を整理して、やり直しに必要となる費用について元請負人と下請負人の間で協議したうえで、必要に応じ契約変更をしましょう。

⑥支払期日が守られているか

工事目的物が完成引渡し後に、正当な理由がなく、長期間にわたり保留金として工事代金の一部を支払わない場合は、建設業法違反になるおそれがあります。

元請負人が注文者から支払いを受けた日から1ヶ月以内、又は下請負人の引渡し申出日から50日以内のどちらか早い方で下請代金を支払わない場合は、建設業法違反になるおそれがあります。

下請代金の支払期日についての詳細はこちら

チェックポイント

  • 工事完成・引渡し後、保留金のない支払いがされているか
  • 支払期日は、元請負人が注文者より支払いを受けてから1ヶ月以内、又は引渡し申し出から50日以内となっているか

【目指すべき取引】建設業法上の支払期日の確認と協議をすること

工事完成・引渡し後、請負代金の支払いを留保することなく、建設業法で定められた支払時期内の日付で支払期日が設定されていることを確認しましょう。

請負代金の支払いは、請求書提出締切日から支払日までの期間をできる限り短くし、早い時期に支払われるように協議しましょう。

⑦協議もなく一方的に支払代金を差し引かれていないか

見積条件や契約書において差引額に関する事項を明示しなかった場合は建設業法違反になるおそれがあります。

双方の協議・合意がなく、元請負人が一方的に根拠不明確な諸費用を差し引いたり、実費より過大な費用を差し引いた場合は建設業法違反になるおそれがあります。

チェックポイント

  • 見積条件や契約書面に差引額について明らかになっていることを確認したうえで、お互いが協議・合意をしているか
  • 請負代金から一方的に、根拠が不明確な諸費用を差し引かれたり、過大な費用が差し引かれたりしていないか

【目指すべき取引】差し引く事項を書面で確認し、双方が合意のうえで反映する

工事で生じた残材の処理費、現場の清掃費、安全協力費などの費用負担の分担を明確にし、請負代金から差し引く事項を書面で確認しましょう。

差引額について透明性が確保されるよう、算定根拠や使途等を明らかにして、元請負人と下請負人が合意のうえで請負代金の支払いに反映しましょう。

⑧割引困難な長期手形で支払われていないか

手形期間が120日を超える長期手形を交付した場合、割引困難な手形と認められる場合があり、建設業法違反になるおそれがあります。

手形を交付する場合には、現金化にかかる割引料等のコストについて下請負人の負担とすることがないよう、十分な協議が必要です。

チェックポイント

  • 手形期間が120日以内となっているか
  • 割引料等のコストが下請負人の負担となっているか

【目指すべき取引】できる限り現金払いとなるよう協議する

手形期間は120日以内で、できる限り短い期間内として、割引料等のコストを下請負人が負担することのないように協議しましょう。

下請代金はできる限り現金払いとし、現金払いと手形払いを併用する場合でも、少なくとも労務費相当分は現金払いとするように協議しましょう。

見積りのルールを確認

建設工事の請負契約締結にあたって事後のトラブルを回避するためには、見積りの段階において、取引条件を当事者間で明確にし、しっかりと協議することが重要です。

見積条件の提示に必要な事項

建設業法第20条第3項(建設業法|e-Gov法令検索

  • ①工事内容
  • ②着手及び完工の時期
  • ③請負代金支払の時期及び方法
  • ④工事を施工しない日又は時間帯
  • ⑤当事者の申し出があった場合における工期の変更又は損害の負担及びそれらの算定方法
  • ⑥天災等不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法
  • ⑦価格等の変動等に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  • ⑧第三者損害の賠償金の負担
  • ⑨貸与資材等の内容及び方法
  • ⑩工事完成検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  • ⑫工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  • ⑬工事目的物の契約不適合責任または契約不適合責任に関する保証等の措置に関する内容
  • ⑭履行遅滞、債務不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  • ⑮契約に関する紛争の解決方法

見積りに必要な期間

建設業法施行令第6条より(建設業法施行令|e-Gov法令検索)

下請工事の予定価格 設けるべき見積期間
①500万円未満 1日以上
②500万円以上5,000万円未満 10日以上
③5,000万円以上 15日以上

法定福利費や安全経費を明確に計上

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料

上記のうち、建設業者が義務的に負担しなければならない法定福利費や労働災害防止対策に要する経費は「通常必要と認められる原価」に含まれるものであるため、見積書にその経費を明示しておく必要があります。

契約のルールについて

契約当事者の間で合意された取引条件を着実に実行するためには、書面に合意事項を記載し、相互に交付して保存することで、契約内容を確認できるようにしておくことが重要です。

契約に必要な事項

建設業法第19条第1項(建設業法|e-Gov法令検索)

  • ①工事内容
  • ②請負代金の額
  • ③着手及び完工の時期
  • ④工事を施工しない日又は時間帯
  • ⑤請負代金支払の時期及び方法
  • ⑥当事者の申し出があった場合における工期の変更又は損害の負担及びそれらの算定方法
  • ⑦天災等不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法
  • ⑧価格等の変動等に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  • ⑨第三者損害の賠償金の負担
  • ⑩貸与資材等の内容及び方法
  • ⑪工事完成検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  • ⑫工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  • ⑬工事目的物の契約不適合責任または契約不適合責任に関する保証等の措置に関する内容
  • ⑭履行遅滞、債務不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
  • ⑮契約に関する紛争の解決方法

契約書面の締結方法

契約書の交付の他、注文書及び請書による相互交付も認められますが、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 基本契約書+注文書・請書
  • 契約約款+注文書・請書

なお、基本契約書又は、契約約款は上記15項目のうち、⑤〜⑮の事項が記載されている必要があります。

請負代金の支払いルール

契約内容を履行した対価として、契約において合意された請負代金の支払が確実に実行されるよう、建設業法で定められた支払期日を把握することが重要です。

出来高に応じた支払い

元請負人が注文者から出来高払又は竣工払を受けたときは、下請負人に対して、元請負人が支払いを受けた金額の出来高に対する割合及び下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、支払いを受けた日から1ヶ月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払う必要があります。

「特定建設業者の元請負人」と「資本金4,000万円未満の一般建設業者の下請負人」の取引における支払い

元請負人は下請負人から工事目的物の引渡しの申出があった日から起算して、50日以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払う必要があります。

特定建設業者が注文者から代金を受取っている場合

次のどちらか早い方で支払う必要があります。

  • ①注文者から支払を受けた日から1ヶ月以内
  • ②引渡し申出日から50日以内

なお、下請代金の支払いにおいて手形期間が120日を超える、割引困難であると認められるおそれのある長期手形を交付してはいけません。

建設業法のサポートは専門行政書士に相談

建設業には、建設業法などに定められた特有のルールがたくさんあります。

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行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

建設業特化の行政書士法人ストレートの代表行政書士。年間申請数は300件を超える。建設業者のみならず行政書士、他士業からも多くの相談を受けるプロが認める専門家。誠実、迅速な対応で建設業者の発展に貢献します。

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