JVとは、ジョイントベンチャーの略で、共同企業体のことをいいます。
1つの建設工事を複数の建設業者が共同で受注・施工する事業組織体であり、法人格のない民法上の組合の一種です。
共同企業体は、建設業者が単独で受注及び施工を行う場合とは異なり、複数の建設業者が1つの建設工事を共同で受注し、施工・完成させることを目的として形成されます。
共同して事業を行うことの合意そのものは、共同企業体の構成員間の契約によるもので、共同企業体は、各構成員間の契約関係から生ずる人的結合関係(団体の一種)であるということができます。
社団における団体構成員の権利義務はや業務執行者は定款等に定められているのに対し、民法上の組合においては、構成員の権利義務関係を構成員相互間の契約で定めており、業務執行も全員又は特定の構成員が行うことになっています。つまり、
これらの点を踏まえると、共同企業体の法的性格については、一般的には民法上の組合であると解されています。
目次
共同企業体の形態
共同企業体の形態は、その活用目的の違いによる区別(特定建設工事共同企業体と経常建設共同企業体)と、共同企業体の施工方式の違いによる区別(甲型共同企業体と乙型共同企業体)とに分類されます。
そして、活用目的と共同企業体としての施工方式は一致せず、両者の適正な組合せは工事の性質等により判断されるべきものです。
特定型と経常型の相違
特定建設工事共同企業体(特定JV)
大規模かつ技術的難度の高い工事の施工に際して、技術力等を結集することにより工事の安定的施工を確保する場合等、工事の規模・性格等に照らし、共同企業体による施工が必要と認められる場合に工事毎に結成する共同企業体のことをいいます。
特定建設工事共同企業体(特定JV)とは、特定の建設工事の施工を目的として工事ごとに結成される共同企業体であり、工事が完了すれば解散することとなります。
特定JVは、単体発注の原則を前提に工事の規模、性格等に照らし、共同企業体による施工が必要と認められる場合に限り活用される共同企業体として位置付けられています。
この他にも、必ずしも単体企業で施工できない工事ではないものの、大規模かつ技術的難度の高い工事についてその共同施工を通じて地元建設業者に技術の移転を図る効果が期待される場合に特定JVを活用することも想定されますが、このような場合には、不良・不適格業者の参入や施工の非効率化等の弊害を引き起こす可能性もあるため、真に必要な範囲においてのみ活用されるとともに、活用目的に応じて定められた対象工事の種類、構成員数等についての明確な基準に基づく適正な活用が確保されることが不可欠です。
経常建設共同企業体(経常JV)
中小・中堅建設業者が、継続的な協業関係を確保することによりその経営カ・施工力を強化する目的で結成する共同企業体のことをいいます。
単体企業と同様、年度当初の競争入札参加資格申請時に共同企業体を結成し、共同企業体として資格認定及び業者登録を受け、工事の受注に当たっては発注者からの業者指名を受けることなどにより、入札に参加し落札した場合は工事を施工するという方式の共同企業体です。
このように、中小・中堅建設業者が継続的な協業関係を確保することによって工事の施工に当たり総合力が発揮できる等、実質的に施工能力が増大したと認められる経常JVに対しては、構成員単独では受注できなかった上位等級工事の機会を開き、中小・中堅建設業の育成・振興が図られることとされています。
- 大規模で技術的難易度の高い特定の工事施工を目的として工事毎に結成される。
- 工事完成後又は工事を受注することができなかった場合には解散。
- 中小・中堅建設業者が継続的な協業関係を確保することにより、その経営力・施工力を強化する目的で結成。
- 入札参加資格審査申請時に経常JVとして単体企業と同様に登録。
甲型と乙型の相違
甲型共同企業体、乙型共同企業体という名称は、使用する標準的な共同企業体協定書(甲・乙)の区別に従ったものです。
甲型共同企業体
甲型共同企業体とは共同施工方式のことであり、全構成員が各々あらかじめ定めた出資割合 に応じて資金、人員、機械等を拠出して一体となって工事を施工する方式をいいます。
この「出資」とは、財産的価値のあるものをすべて対象としており、その出資の時期は共同企業体の資金計画に基づき工事の進捗に応じて決定されます。
損益計算についても、共同企業体として会計単位を設けて合同で損益計算が行われ、各構成員の企業会計への帰属は出資比率に応じたものとなります。
利益 (欠損) の配分等については、各構成員の出資割合に従って配分が行われます。
乙型共同企業体
乙型共同企業体とは分担施工方式のことであり、各構成員間で共同企業体の請け負った工事をあらかじめ分割し、各構成員は、それぞれの分担した工事について責任をもって施工する方式をいいます。
たとえば、水力発電施設建設工事において、A社はダム建設、B社は水路、C社は発電設備を分担して施工するというものです。
表面的には分離・分割発注と似ていますが、最終的には他の構成員の施工した工事について、お互いが発注者に対して連帯責任を負うことになっているところが分離・分割発注と大きく異なります。
各構成員は共通経費については共同企業体の事務局へ支払いますが、損益計算については、各構成員が自分の分担工事ごとに行い、甲型共同企業体のように構成員一体となった合同計算は行いません。
したがって、乙型共同企業体では、構成員の中に利益をあげた者と損失が生じた者とが混在する可能性もあります。
利益(欠損)の配分等についても、各社の損益計算で算定された利益 (欠損)が各社ごとに残ることになり、構成員間で利益と損失の調整がなされることはありません。
しかし、乙型共同企業体であっても、運営委員会で定めた分担表に基づく責務を各構成員が果たすことのほか、施工の共同化、たとえば施工計画、施工監理さらには資機材の共同使用といった面についてもできる限り努力することが望まれます。
甲型JV | 乙型JV | |
施工方式 | 出資比率に応じて一体施工 | 分担工事を施工 |
共通経費 | 出資比率に応じて負担 | 分担工事額の割合に応じて負担 |
費用計算 | 一体となって行う | 分担工事ごとに行う |
施工責任 | 一体となって行う | 分担工事ごとに行う |
利益分配 | 構成員は工事全体について責任を負う | 最終的には工事全体につき連帯責任 |
技術者の配置
建設業法の現場技術者の配置についての規定は、共同企業体の各構成員にも適用されます。
甲型の場合
下請契約の額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上となる場合には、特定建設業者たる構成員1社以上が監理技術者を設置しなければなりません。
特定建設業者である代表者が監理技術者を設置すれば、その他の構成員は主任技術者を設置することで差し支えありませんが、代表者の変更などの事態も考慮すると、監理技術者となりうる者を主任技術者にしておくことが望ましいです・
また、請負金額が4,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上となる場合は、設置された配置技術者は専任でなければなりません。
なお、共同企業体が公共工事を施工する場合には、原則として特定建設業者たる代表者が、請負金額にかかわらず監理技術者を専任で設置すべきであるとされています。
乙型の場合
1つの工事を複数の工区に分割し、各構成員がそれぞれ分担する工区で責任を持って施工する乙型にあっては、分担工事に係る下請契約の額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上となる場合には、当該分担工事を施工する特定建設業者は、各自、監理技術者を設置しなければなりません。
また、分担工事に係る請負金額が4,000万円 (建築一式工事の場合は8,000万円)以上となる場合は、設置された配置技術者等は専任でなければなりません。
共通事項を確認
いずれの場合も、その他の構成員は主任技術者を当該工事現場に設置しなければならないのですが、公共工事を施工する特定建設共同企業体にあっては国家資格を有する者を、また、公共工事を施工する経常建設共同企業体にあっては原則として国家資格を有する者を、それぞれ請負金額にかかわらず専任で設置すべきであるとされています。
このほか、共同企業体による建設工事の施工が円滑かつ効率的に実施されるためには、すべての構成員が施工しようとする工事にふさわしい技術者を適正に設置し、共同企業体の体制を確保しなければなりません。
経営事項審査における完成工事高
共同企業体方式(JV)による工事の施工実績も、個別の構成員の完成工事高や工事成績に反映されます。
甲型(共同施工方式)の場合には、請負代金額に各構成員の出資割合を乗じた額が反映されます。
乙型(分担施工方式)の場合には、運営委員会で定めた分担工事額が反映されます。
施工体制台帳の作成等
共同企業体(JV)は、複数の建設業者が契約に基づき、共同して1つの建設工事を請け負い、施工するために結成する事業組織体であり、共同企業体そのものは法人格を持たず、建設業の許可も持っていません。
したがって、施工体制台帳や施工体系図の作成等の義務は、共同企業体の構成員である建設業者自体にかかりますが、共同企業体の形態の違いに応じて作成者や記載対象に違いがあります。
甲型JVの場合
1つの工事を構成員が共同して施工するものですから、通常、代表者である構成員が監理技術者を設置し、施工体制台帳の作成等を行うこととなります。
施工体制台帳に記載が必要な建設業者等の範囲は、工事の施工に係るすべての建設業を営む者です。その他の構成員も当該建設工事の施工に関与している建設業者であり、施工体制台帳等への記載の対象となります。
乙型JVの場合
共同企業体が請け負った建設工事を、あらかじめ複数の工区に分割し、各構成員がそれぞれ分担した工区の工事を責任を持って施工し発注者に連帯責任を負うものですから、分担された工区ごとに当該工区の施工の責任を持つ構成員が監理技術者を設置し、施工体制台帳の作成等を行うこととなります。
この場合の施工体制台帳に記載が必要な建設業者等の範囲は、当該分担工事の施工に係るすべての建設業を営む者となります。
下請契約をする際の注意点
特定建設業の許可関係
甲型の共同企業体(JV)が発注者から直接請け負った1件の工事について、その工事の全部又は一部を、総額で4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上となる下請契約を締結して施工しようとする場合は、代表者を含む1社が特定建設業の許可を有していることが必要とされています。
ただし、倒産等による代表者の変更のおそれがあることを踏まえて、各構成員が特定建設業の許可を有していることが望まれます。
乙型の共同企業体(JV)の構成員が、担当する工区に関する工事について総額で4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上となる下請契約を締結して施工しようとする場合には、その構成員は特定建設業の許可を有していることが必要です。
構成員との下請
共同企業体は、それ自体は法人格を有していません。したがって、共同企業体とその構成員である企業とが契約することは、民法上の自己契約に該当し、建設業法の下請契約としては認めがたいものと考えられます。
また、このような契約は、出資比率に比べて一構成員が施工の多くを手がけることとなるため、実体上は共同企業体制度の趣旨に反するとともに、一括下請負に該当するなどの建設業法違反となるおそれが強く、他の構成員の実質的な関与を担保する手段がないため、適当でないとされています。
下請としての共同企業体の適否
共同企業体が請負った建設工事を他の共同企業体に下請させることについては、直ちに建設業法違反ということではありませんが、共同企業体制度が元請の制度として考えられていることから、下請としての共同企業体については想定していません。
また、一括して発注すれば一括下請負の禁止に該当するおそれも強いものになります。
以上のような建設業法上の観点のほか、共同企業体としての性格から契約行為について次のような注意事項があります。
①契約書では、各構成員が連帯で責任を負う旨明記し、契約の締結は、共同企業体の名称を冠して代表者及びその他の構成員全体の連名により、又は少なくとも共同企業体の名称を冠した代表者の名義によること(甲型の場合。乙型もこれに準ずることが望ましい。)
②契約の履行についての各構成員間の責任分担及び下請企業等との権利義務関係について、運営委員会において予め各構成員協議の上決定するとともに、下請企業等と予め十分協議を行うこと
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