元請負人と下請負人の双方は、建設工事の請負契約の締結にあたり、工期に変更が生じないようできる限り努める必要があります。
また、改正建設業法によって、工事の施工に通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならないとされています。
こうした適正な工期の確保に関する取り組みの目的は、建設業の働き方改革の促進、将来の担い手の確保に向けた建設現場の生産性の向上にあります。
この記事では、
- 工期の適正化とは?
- 時間外労働の罰則付き上限規制
- 工期に関する基準
- 著しく短い工期であるかどうかの判断基準
- 工期に変更が生じた場合の対応
について、建設業専門の行政書士法人ストレートが解説します。
目次
工期の適正化とは?
改正建設業法によって、著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならないとされています。
改正の背景と改正点、また、それに伴って令和6年から適用される働き方改革による時間外労働の罰則付き上限規制について解説していきましょう。
建設業法改正の目的
令和2年10月1日に改正建設業法が施行されました。
建設業法の改正点は次のとおりです。
- ①著しく短い工期による請負契約締結の禁止
- ②工期等に影響を及ぼす事象に関する情報提供
- ③工程の詳細を明らかにする
- ④契約書に工事を施工しない日・時間帯を明記
改正の目的は、建設業界で問題となっている長時間労働の是正と週休2日の確保に向けて、働き方改革を促進することにあります。
時間外労働にも罰則付きの上限規制が適用されるようになる
工期の適正化に併せ、働き方改革関連法による改正労働基準法に基づき、令和6年4月1日からは建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されるようになります。
建設業の高齢化と若者離れが深刻な中、将来の担い手の確保に向けた生産性の向上への取り組みと併せて、発注者の取り組みが必要とされます。
画像出典:適正な工期の確保に向けた取組について
工期に関する基準
適正な工期を確保するための「後期に関する基準」と、著しく短い工期であるかどうかの判断基準について解説していきましょう。
適正な工期を確保するためには多くの要因を考慮する必要がある
建設工事を施工するために通常必要と認められる期間と比べて著しく短い期間を、「著しく短い工期」と言います。
建設工事はそれぞれ規模・工法・業者が異なるので、一律の工期を設定することはできません。したがって、著しく短い工期とならないためには、多くの要因を考慮して決定する必要があります。
中央建設業審議会が作成した適正な工期を確保するための「工期に関する基準」(国土交通省Webサイト)では、発注者と受注予定者が工期を設定するに当たって適正な工期となるよう考慮すべき事項が記されています。
この「工期に関する基準」には、大きく分けて「工期全般にわたって考慮すべき事項」、「工程別に考慮すべき事項」、「分野別に考慮すべき事項」があります。
工期全般にわたり考慮すべき事項
「工期全般にわたり考慮すべき事項」は、次の10項目です。
①自然要因 | 降雨日・降雪日、河川の出水期における作業制限等 |
②休日・法定外労働時間 | 改正労働基準法に基づく法定外労働時間 |
③イベント | 年末年始、夏季休暇、GW、農業用水塔の落水期間等 |
④制約条件 | 鉄道近接・航空制限などの立地に係る制約等 |
⑤契約方式 | 設計段階における受注者(建設業者)の工期設定への関与、分離発注等 |
⑥関係者との調整 | 工事の前に実施する計画の説明会等 |
⑦行政への申請 | 新技術や特許公報を指定する場合、その許可がおりるまでに要する時間等 |
⑧労働・安全衛生 | 労働安全衛生法等の関係法令の遵守、安全確保のための十分な工期の設定等 |
⑨後期変更 | 当初契約時の工期の施工が困難な場合、工期の延長等を含め、適切に契約条件の変更等を受発注者間で協議・合意 |
⑩その他 | 施工時期や施工時間、施工法等の制限等 |
工期別に熟慮すべき事項
「工程別に熟慮すべき事項」では次の工程において考慮すべき事項が記載されています。
- ①準備
- ②施工
- ③後片付け
分野別に考慮すべき事項
「分野別に考慮すべき事項」では次の各分野において熟慮すべき事項が記載されています。
- ①住宅・不動産分野
- ②鉄道分野
- ③電力分野
- ④ガス分野
著しく短い工期であるかどうかの判断基準
なお、著しく短い工期であるかどうかの判断基準については、一律に判断することが難しいため、次のようなことを行い、許可行政庁によって個別に判断されることとなります。
- 休日や雨天など、中央建設業審議会において作成した工期に関する基準で示した事項が考慮されているかどうかの確認
- 過去の同種類似工事の実績との比較
- 建設業者が提出した工期の見積りの内容の精査などを行い、許可行政庁が工事ごとに個別に判断
工期の変更が生じた場合の対応
工期の変更が生じないよう努める必要があるとはいえ、状況によってやむを得ず工期を変更しなければならなくなることもあるかもしれません。このような場合の対応について解説していきましょう。
やむを得ず工期変更が生じた場合は変更契約を締結する
請負契約の締結に当たり、元請負人と下請負人は適正な工期を設定し、徹底した工程管理のもとで工期に変更が生じないよう努めなければなりません。
とはいえ、工事現場の状況次第ではやむを得ず工期を変更する必要に迫られることもあるでしょう。
このような時には、当初の契約締結の際と同様に、変更の内容を書面に記載し、署名又は押印をして相互に交付する必要があります。(建設業法第19条第2項)
元請負人は速やかに変更に係る工期や費用等について、下請負人と協議しなければなりません。また、合理的な理由なく、元請負人の一方的な都合によって必要な変更契約締結を行わない場合は建設業法違反となります。
また、工期の変更によって増加した費用は、下請負人の責めに帰すべき理由がなければ元請負人が負担する必要があります。
変更後の工期がすぐ確定できない場合の確認事項
工期が変更になったら、変更後の工期が確定した時点で遅滞なく行うことになっていますが、変更後の工期がすぐに確定しない場合は次の2点を確認し、確定した時点で契約変更手続きを行います。
- ①工期の変更が契約変更等の対象となること
- ②契約変更などを行う時期を明確に記載した書面を残すこと
工期を適正化するための基準まとめ
- 工期の適正化によって働き方改革を促進、長時間労働を是正するの目的がある
- 中央建設業審議会が作成した、適正な工期を確保するための「工期に関する基準」がある
- 著しく短い工期であるかどうかは、一律に判断することが難しいため工期に関する基準や過去の類似した工事、建設業者が提出した工期の見積りの内容等を基に個別に判断される
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