独占禁止法とは、事業者間の公平で自由な競争を促進し、消費者の利益を確保することを目的とする法律で、これらを阻害する行為は禁止されています。
建設業においては、下請取引について不公正な取引方法があった場合、その違反行為について下請法ではなく建設業法と独占禁止法による措置がなされます。建設業法と独占禁止法の関係について、詳細を見ていきましょう。
この記事では、建設業法と独占禁止法との関係について、建設業専門の行政書士法人ストレートが解説します。
記事の要点
この記事をわかりやすく要約した内容を先に紹介しましょう。
- 建設業法第42条の規定に違反している事実があり、その事実が独占禁止法第19条の規定に違反していると認める時は、公正取引委員会に対して適当な措置を求めることができる。→詳細へ
- 独占禁止法とは、公正かつ自由な競争を促進し、事業者間の競争によって消費者の利益を確保することが目的の法律で、これらを阻害する行為は禁止されている。→詳細へ
- 公正取引委員会は、建設業の下請取引において不公正な取引方法の認定基準(10項目)を規定している。→詳細へ
それぞれについて詳しく解説していきます。
建設業法と独占禁止法との関係
建設業法第42条によれば、国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の規定に違反している事実があり、その事実が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)第19条の規定に違反していると認めるときは、公正取引委員会に対して適当な措置を求めることができると定めています。
- 第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)
- 第19条の4(不当な使用資材等の購入強制の禁止)
- 第24条の3第1項(下請代金の支払)
- 第24条の4(検査および引渡し)
- 第24条の5(不利益取扱いの禁止)または第24条の6(特定建設業者の下請代金の支払期日等)第3項もしくは第4項
そもそも独占禁止法とは何か?
独占禁止法とは、公正かつ自由な競争を促進し、事業者間の競争によって消費者の利益を確保することが目的の法律で、正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。
したがって、これを阻害する行為(カルテル・私的独占・不公正な取引方法)を行った企業には、公正取引委員会に対して措置請求を求めることができます。
下請取引に関する不公正な取引方法の認定基準
公正取引委員会は、建設業の下請取引において不公正な取引方法の認定基準を規定しています。規定によれば、次の行為があった場合は不公正な取引方法に該当するものとされます。
- ①下請負人が請け負った建設工事が完了してから20日以内に完成を確認する検査を完了しないこと
- ②①の検査後、下請負人が申し出たにも関わらず正当な理由なしに建設工事の目的物の引渡しを受けないこと
- ③元請が工事の請負代金の支払を受けてから起算して1か月以内に、下請負人に対して下請代金の支払いをしないこと
- ④特定建設業者が注文者となった下請契約における下請代金を、②の申し出の日から起算して50日以内に支払わないこと
- ⑤特定建設業者が注文者となった下請契約における下請代金の支払いにおいて、②の申し出の日から起算して50日以内に、一般の金融機関による割引を受けることが困難と認められる手形を交付することで下請負人の利益を不当に害すること(詳細はこちら:下請代金の割引困難手形による支払の禁止)
- ⑥事故の取引上の地位を不当利用し、注文した建設工事の施工に必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額として下請契約を締結すること
- ⑦下請契約の締結後、正当な理由なしに下請代金を減額すること(詳細はこちら:赤伝処理で建設業法違反となる行為)
- ⑧下請契約の締結後、自己の取引上の地位を不当利用して注文した建設工事に使用する資材や機械器具等の購入先を指定し、下請負人に購入させることによって不当に利益を害すること(詳細はこちら:使用資材等の購入先の指定をすると建設業法違反なのか?)
- ⑨注文した建設工事に必要な資材を購入させた場合、正当な理由なしに当該資材を用いる建設工事に対する下請代金の支払期日より早い時期に当該資材の対価を支払わせ、下請負人の利益を不当に害すること
- ⑩元請負人が①~⑨に当たる行為をした場合、下請負人がその事実を公正取引委員会等に知らせたことを理由に、取引の量を減らしたり停止したりする等の不利益な取り扱いをすること
以上、建設業法と独占禁止法との関係について解説しました。