建設業許可は、500万円以上(建築一式の場合は1,500万円以上)の工事を請負う場合や公共工事入札に参加する場合に必要であり、その許可取得の要件は建設業法において非常に厳しく設定されています。
この記事では、自社が建設業許可の要件を満たしているのかを知ることができるよう、建設業許可専門の行政書士が審査項目ごとに解説していきます。
目次
建設業許可の6つの要件
建設業許可を受けるには、次の6つすべてを満たす必要があります。
- 経営業務管理責任者の常勤在籍
- 専任技術者の常勤在籍
- 一定以上の財産的基礎を有する
- 営業所に独立性がある
- 欠格要件に該当しない
- 社会保険に加入している
経営業務管理責任者の在席
最も重要なポイントである経営業務管理責任者とは、建設業の役員の経験が5年以上ある者が、建設業許可申請を行う企業の役員として常勤で在席していなければならないというもので、略して「ケイカン」と呼ばれています。
また、審査は厳しいですが、「6年以上経営業務管理責任者に準ずる地位に就いた人」等も経営業務管理責任者になることが可能です。
建設業の役員等とは
建設業許可における役員とは、株式会社・有限会社の取締役、合同会社等の持分会社の業務執行社員、支店長、営業所長、個人事業主または支配人、法人格のある組合の理事等をいいます。監査役や会計監査人等は含まれないので注意しましょう。
求められる経験とは
経営業務管理責任者に求められる経験とは、建設工事を請負う企業において、前記役員等の経験が5年以上あるかどうかです。建設業を営む会社に役員として5年以上登記されていた人や、個人事業として建設業を5年以上営んだ人等は就任できる可能性が高いです。
常勤で在席とは
常勤性の定義は、原則として本社(本店)において休日祝日を除き、毎日所定の時間中その職務に従事することとされています。建設業許可申請においてその証明は、経営業務管理責任者になろうとする人の健康保険証の写しを提出することにより行います。個人事業主の場合は国民健康保険証の写しと直近の確定申告書により証明するのが通常です。
常勤役員等という制度
建設業に関する経営経験が5年以上ある人がいない場合でも、「取締役経験5年のうち2年以上が建設業で、その人を補佐する財務・労務・運営の経験豊富な社員がいる」という場合等も、建設業許可における経営経験の要件を満たす常勤役員等になることができます。
専任技術者の在席
経営業務管理責任者と並んで重要な専任技術者とは、建設業許可を受けようとする業種に関する資格または一定以上の実務経験を有する技術者が常勤で在席していなければならないというもので、略して「センギ」と呼ばれています。
業種ごとに必要な資格は異なる
建設業許可は29業種に分類されていて、建築工事業の専任技術者となるには建築士や建築施工管理技士、土木工事業の専任技術者となるには土木施工管理技士や建設機械施工技士といったように、それぞれの業種ごとに求められる資格が異なります。許可を取得したい業種に必要な資格をしっかり確認する必要があります。
一定以上の実務経験とは
建設業許可を申請する業種に対応する資格を持っていない場合でも、その業種について10年以上の実務経験を有する場合は専任技術者になることができます。実際には同じ期間に2つ以上の業種の経験を積んでいたとしても、建設業許可においては同じ期間で2業種の実務経験証明は認められないので注意しましょう。
実務経験年数の短縮
基本的には10年以上の実務経験が必要とされる専任技術者ですが、次のいずれかに該当する場合は10年の実務経験がなくても専任技術者になることができます。
- 高校の指定学科卒業後5年以上の実務経験を有する者
- 大学の指定学科卒業後3年以上の実務経験を有する者
指定学科には、土木工学、建築学、都市工学、電気工学、電気通信工学、機械工学、衛生工学、林学、鉱山学に関する学科があり、それぞれがどの業種に該当するかは次の表をご確認ください。
財産的基礎を有する
建設業を営むには、資材の購入、労働者の確保、機材の購入等の工事着工準備資金が必要であることから、一定以上の資産を有しているかという審査項目が設けられています。建設業許可には、一般建設業許可と特定建設業許可の2種類があり、求められる財産的基礎が異なりますので確認しておきましょう。
一般建設業許可の財産的基礎
一般建設業許可の新規申請においては、次のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上ある
- 500万円以上の資金調達能力がある
自己資本500万円とは
自己資本が500万円以上というのは、会社の場合、申請日時点の直近の決算における貸借対照表の純資産合計で確認します。個人事業の場合は、直前の確定申告における期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額で判断されます。
500万円以上の資金調達能力とは
申請者名義の口座について500万円以上の預金残高証明書を銀行に発行してもらえれば問題ありません。あくまで求められるのは調達能力であり、常に500万円以上をキープしなければならないというものではないので、一時的に融資を受けてもいいですし、社長個人から会社に貸付を行っても構いません。
特定建設業許可の財産的基礎
特定建設業許可業者は、規模の大きな工事請負が想定されているため、下請負人保護のため一般建設業許可より厳格な要件となっており、次の4つをすべてを満たす必要があります。
- 欠損比率20%以下
- 流動比率75%以上
- 資本金2,000万円以上
- 純資産額4,000万円以上
この基準については、やはり申請直前の決算における貸借対照表により判断されますが、資本金2,000万円以上の要件だけは、決算確定後に変更しても構いません。
営業所の独立性
建設業許可において営業所とは、請負契約の締結に関する行為(見積・入札・契約等)を行う事務所と定義されており、次の4つを備えている必要があります。
- 外部から来客を迎え入れ、工事請負に関する見積り、入札、契約締結等の実体的な業務を行っていること
- 固定電話・机・各種事務台帳等を備え、契約の締結等ができるスペースを有し、かつ他の事業者とは明確に区分されている
- 個人の住宅のなかに事務所がある場合は、居住部分と適切に区別され独立性が保たれていること
- 営業用事務所としての使用権原を有している
- 看板、標識等で外部から建設業の営業所であることが分かる表示がある
固定電話の設置については不要とされている許可行政庁もありますが、その他はどこの許可においても同じです。申請時には、これらを備えていることを写真により証明します。
欠格要件に該当しない
建設業許可業者には誠実性が求められており、「法人自体、役員等、個人事業主、支配人、支店長、営業所長、5%以上の株主」等が次のいずれかに該当する場合、欠格者と判定され許可を受けることができません。
1.許可申請内容に虚偽または重要な事実の記載が欠けているとき。
2.役員等が、次の要件に該当しているとき。
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
③不正の手段で許可または認可を受けたこと等により、その許可を取り消されて5年を経過しない者
④前記③に該当するとして聴聞の通知を受け取った後、廃業の届出をした場合、届出から5年を経過しない者
⑤建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、または危害を及ぼすおそれが大であるとき、あるいは請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
⑥禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑦建設業法、建築基準法、労働基準法等の建設工事に関する法令のうち政令で定めるもの、若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、または刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に処せられ、刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑧暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
⑨暴力団員等がその事業活動を支配する者
6.社会保険への加入
適用が除外される事業者を除き、申請日時点で社会保険に加入していないと建設業許可を受けることができません。社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の3つをいいます。
建設業許可の要件以前に、法人を設立した時点で原則加入が義務付けられているものではありますが、多くのコストがかかることから加入を見送っている事業者も多いので、未加入事業者は建設業許可申請時に見直す必要があります。
適用が除外される事業者
健康保険・厚生年金保険については、従業員5名以下の個人事業主の場合、適用が除外されるので、国民健康保険のまま申請が可能です。また、土建組合等の健康保険組合に加入している場合、健康保険が適用除外となります。(厚生年金保険の適用は除外されません)
行政書士による建設業許可要件診断
建設業許可を取得するには多くの要件をクリアする必要があります。
特に経営業務管理責任者や専任技術者の要件は複雑なうえ、実際の申請においてはその経験を書類で証明できるかがポイントとなります。
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