宅建業とは宅地建物取引業の略称で、宅地又は建物について次に掲げる行為を業として行うものと定義されています。
- 宅地又は建物について自ら売買又は交換することを業として行うこと
- 宅地又は建物について他人が売買、交換又は貸借するにつき、その代理若しくは媒介することを業として行うこと
具体的には、宅地又は建物について、不特定多数の人を相手方として、次の表のうち★印の行為を反復又は継続して行う場合に宅建業の免許が必要となります。
区分 | 自己物件 | 他人の物件の代理 | 他人の物件の媒介 |
---|---|---|---|
売買 | ★ | ★ | ★ |
交換 | ★ | ★ | ★ |
賃貸 | – | ★ | ★ |
目次
宅建業免許の区分
上記宅建業を営むには、宅建業法の規定により国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受ける必要があります。町の不動産屋もみんなこの免許を持っているので、よく見ると事務所内に宅建業者としての標識が掲げられているはずです。
宅建業を営む事業者の事務所が1つの都道府県内にのみ設置されている場合は都道府県知事免許、事務所が2つ以上あり、異なる都道府県に設置されている場合は国土交通大臣免許を受けることになります。
免許区分 | 事務所が東京都内にのみ存在 | 事務所が東京都と埼玉県に存在 |
国土交通大臣 | - | ★ |
都道府県知事 | ★ | - |
宅建業免許を受けるための要件
宅建業の免許を受けるには、国土交通大臣免許、都道府県知事免許いずれにおいても次の要件をすべて満たす必要があります。
- 使用制限されている商号でない
- 専任の取引士が設置されている
- 事務所に独立性がある
- 欠格事由に該当していない
それでは上記要件につき、ひとつずつ説明していきたいと思います。
商号・名称の制限
宅建業の免許申請は、個人又は法人のいずれでもできることになっていますが、申請者の商号又は名称が、使用を制限されているものである場合、その商号又は名称の変更を指示される場合があります。
使用が制限される商号や名称には、例えば次のようなものがあります。
- 〇〇公社、〇〇協会等、公的機関と認識される可能性があるもの
- 〇〇流通機構等、指定流通機構と認識される可能性があるもの
また、商号が図形や符号等で判読しにくいものも制限されることがあるので注意しましょう。
専任取引士の設置
宅建業免許における宅地建物取引士には、事務所ごとに専任で設置しなければならない専任の取引士と、それ以外の取引士があります。
宅地建物取引業のうち、重要事項説明等を行う等、2種類の取引士の実際の業務内容に違いはありませんが、専任の取引士は、事務所に「専任」でなければなりません。
宅地建物取引士とは
宅地建物取引士は一般的に取引士と略され、宅地建物取引士資格試験に合格後、取引士資格登録をし、取引士証の交付を受けている人のことをいいます。
なお、取引士証の有効期間は5年間で、取引士証の有効期限が切れている場合は、取引士として認められないので注意しましょう。
取引士の専任性とは
宅建業免許の専任の取引士は、「常勤性」と「専従性」の二つの要件を満たさなければなりません。常勤性とは事務所にいつもいること、専従性とは宅建業の業務に従事することをいいます。
また、常勤及び専従していても、次のような場合はその専任性が認められないので、専任の取引士を設置する際はよく確認しておく必要があります。
-
- 他法人の代表取締役、常勤役員、会社員等
- 他の個人事業主
- 住所が通勤不可能な場所にある場合
- 他法人での取引士登録が削除されていない人
また、申請会社の監査役は、当該申請会社での専任の取引士に就任することはできません。
専任の取引士は5人に1人必要
専任の取引士は、その事務所において宅建業に従事する人のうち5人に1人以上を設置することが義務付けられています。専任の取引士の数が不足した場合は、2週間以内に補充等必要な措置をとる必要があります。
専任の取引士が免許申請前にやること
新規免許申請の際、専任の取引士は、「取引士資格登録簿」に勤務先名が登録されていない状態であることが必要です。取引士登録をしている行政庁窓口にて、必ず事前に勤務先をカラにしておきましょう。
事務所の独立性
宅建業免許申請の審査においてつまづくことの多い事務所の要件について説明します。
宅建業免許における事務所とは、その所在地によって大臣免許・知事免許の区分が決まり、また、専任の取引士の設置義務、事務所の数に応じた営業保証金の供託等、免許を受けるうえで重要な位置付けになっていて、政令では具体的には次の2つを宅建業法上の事務所として定めています。
①本店又は支店
宅建業者が商人の場合
本店又は支店として履歴事項全部証明書に登記されたものを事務所として扱います。
仮に本店で宅建業を行わなくても、支店で宅建業を営むと、本店も宅建業における「事務所」として扱われるため、この場合、本店にも営業保証金の供託及び専任の取引士の設置が必要となります。これは、登記上の本店であるからには、具体的に宅建業を行わなくても、支店で行う宅建業について、何らかの管理的な機能を果たしているはずだからとのことです。
支店については、支店の登記があっても、この支店において宅建業を行わない場合は「事務所」としては取り扱いません。
宅建業者が商人以外の者である場合
協同組合(農業協同組合及び生活協同組合)や公益法人等商人でない業者については、個々の法律で、「主たる事務所」又は「従たる事務所」として取り扱われるものをいいます。
②「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所」で、宅建業に係る契約締結権限を有する使用人を置くもの
本店・支店以外にも、実体上このような場所は従たる事務所として取り扱われます。例えば「〇〇営業所」や「〇〇出張所」といった名称で宅建業に関する契約締結を行う場合は従たる事務所に該当します。
「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所」とは
これは、物理的に社会通念上事務所と認識される形態を備えている事務所のことをいいます。例えば、テント張りの案内所など、容易に移動できる施設等は事務所としては認められません。
事務所の形態について
宅建業を継続的に行える機能を持ち、社会通念上も事務所として認識される独立した形態を備えていて、事務所として使用する権原を有していることが必要です。このため、戸建住宅やマンションの一室を事務所として使用すること、一つの事務所を他の法人等とシェアして使用すること、仮設のプレハブ等を事務所とすることは原則として認めておりません。
住居兼事務所が認められるケース
住宅の一部を宅建業の事務所として使用することは原則認められていないのですが、次の事項をすべて満たす場合は認められる可能性があります。
- 玄関から事務所まで他の部屋を通過しない
- 他の部屋とは壁で間仕切りされている
- 事務所設備が備わっている
- 事務所の用途にだけ使用している
上記事項を満たしていることを間取図と写真で明確に証明できるようにして申請を行いましょう。
他事業者と同一の事務所が認められるケース
A社、B社ともに独立した出入口があり、他社の専用部分を通ることなく出入りができることと、両社の間に高さ180cm以上のパーテーションなど固定式の間仕切りがあり、相互に独立した空間であることの2つを満たせば認められます。
宅地建物取引業の欠格事由
宅地建物取引業免許には欠格事由があり、申請者及びその役員等が以下のいずれかひとつにでも該当する場合は、免許を受けることができません。
①免許申請の重要な事項について虚偽がある、若しくは重要な事実の記載が欠けている
②5年以内に以下の事項に該当している
・免許不正取得、情状が特に重い不正不当行為、又は業務停止処分違反をして免許を取り消された
・前記のいずれかの事由に該当するとして、免許取消処分の聴聞の公示をされた後、相当の理由なく廃業等の届出を行った
・ 禁錮以上の刑に処せられた
・宅建業法、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、又は刑法(傷害・現場助勢・暴行・凶器準備集合・脅迫・背任)の罪、暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられた
・暴力団員等
・免許申請前5年以内に宅地建物取引業に関して不正または著しく不当な行為をした
③ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない
④宅地建物取引業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな場合
⑤精神の機能の障害により宅地建物取引業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない場合
宅建業免許要件のまとめ
宅建業免許は行政書士に依頼しなくても、独立性のある事務所に取引士が専任していて、欠格事由がなければ、申請書類を揃えるために手引きを読み込んで書類を作成し、何度か申請先窓口に通えば免許は下ります。
ただ、審査窓口では、はじめて申請手続きを行おうとしている人の想像よりも数倍面倒な補正を求められたりするので、根気はいると思います。
免許取得を急いでいる人や、開業準備で忙しく申請準備をしている時間がない人、面倒な行政手続きは専門家に外注して経営に専念したい人などは行政書士に相談してみてはかがでしょうか。