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2021.06.07

財産的基礎とは?建設業許可の資産要件について解説

建設工事を請負い、施工するには、資材の購入及び労働者の確保、機械器具等の購入など、一定の準備資金が必要であることから、建設業許可を受けるためには一定以上の資産を有していることが要件とされていて、これを財産的基礎といいます。

許可に必要な財産的基礎は、一般建設業許可と特定建設業許可で異なる基準が定められているので確認しておきましょう。

一般建設業許可の財産的基礎

一般建設業許可は、500万円(建築一式は1,500万円)以上の工事を請負う建設事業者が受けなければならない許可です。この基準から、一般建設許可を受けるには次のいずれかの財産的基礎を有していることが要件とされています。

  • 自己資本が500万円以上ある
  • 500万円以上の資金調達能力がある

いずれかを満たせばOKという規定ですが、実務上は、自己資本が500万円に届かない場合に資金調達能力を証明するという取り扱いになっています。

自己資本500万円以上とは

自己資本とは、かんたんに言うと「資産-負債」のことで、返済を要しない資産がいくらあるのかというイメージです。この自己資本は、建設業許可を申請する日の直前の確定した決算内容により判定されます。

法人の自己資本

法人の場合は、決算書のうち貸借対照表における「純資産の部」の「純資産合計」の額がそのまま自己資本として評価されます。

この自己資本が500万円以下の場合は、次項の500万円以上の資金調達能力を有することを証明する必要があります。

個人事業の自己資本

個人事業の場合は少し複雑で、次のとおり計算することにより自己資本の額を算出できます。

(期首資本金+事業主借+事業主利益)-事業主貸+(利益留保性引当金+準備金)

自己資本500万円以上の証明方法

自己資本が500円以上ある場合、特に証明書類等を用意する必要はありません。建設業許可申請において「財務諸表」という決算内容を反映した書類の提出が必要であり、そのうちの貸借対照表(様式第15号)における純資産合計の額により判定されるためです。

個人事業の場合は面倒な計算式がありましたが、財務諸表を正しく作成したうえで、貸借対照表における純資産が500万円を超えるようであれば別途計算をする必要はありません。

500万円以上の資金調達能力とは

こちらはシンプルで、金融機関で500万円以上の預金残高証明書を発行してもらえばOKです。あくまで証明しているのは資金調達能力なので、建設業許可申請直前に一時だけ口座に入れた残高でも問題ありません。

この預金残高証明書の有効期限は申請の日から遡って1ヶ月以内なので注意しましょう。

会社設立直後の場合

会社設立後、第1期決算を迎える前に申請を行う場合、設立時貸借対照表により純資産が500万円以上であれば自己資本500万円以上の要件をクリアしていることになります。設立時資本金が500万円以下である場合は、通常通り500万円以上の預金残高証明書を用意しましょう。

許可更新時の財産的基礎

建設業許可には5年に一度の更新がありますが、許可取得以降の決算変更届を毎年しっかり提出していれば自己資本が500万円以下でも問題ありませんし、また、預金残高証明書の提出も求められません。そもそも決算変更届の未提出があると更新は認められないので、一般建設業許可における更新においては資産要件が実質ないものという扱いとなっています。

特定建設業許可の財産的基礎

特定建設業許可業者は、規模の大きな工事請負が想定されているため、下請負人保護のため一般建設業許可より厳格な要件となっており、次の4つを直前の決算において満たす必要があります。

  • 欠損比率20%以下
  • 流動比率75%以上
  • 資本金2,000万円以上
  • 純資産額4,000万円以上

この基準については、やはり申請直前の決算における貸借対照表により判断されますが、①資本金だけは決算確定後に変更しても構いません。

欠損比率20%以下

{繰越利益剰余金の負の額-(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金)}÷資本金×100

上記計算式により算出された数字が20以下であれば問題ありません。

そもそも繰越利益剰余金に負の額がない場合は計算するまでもなく欠損比率の要件をクリアしているということになります。

流動比率75%以上

流動比率とは、1年以内に現金化できる資産が、1年以内に返済すべき負債をどれだけ上回っているかを表すもので、会社の短期的な支払能力や安全性が分かります。

流動資産合計÷流動負債合計×100

上記計算式により算出された数字が75以上であればOKです。

流動資産合計が流動負債合計より1円でも多ければ計算するまでもなく要件を満たしていることになります。

資本金2,000万円以上

資本金の額とは、法人の場合は登記されている資本金、個人事業の場合は直前決算における期首資本金のことをいいます。

現金出資、現物出資等の内訳わ問われませんし、他科目からの振り替えでも問題ないので、繰越利益剰余金を資本金に組み込んで資本金2,000万円を満たす会社も多いです。

純資産4,000万円以上

一般建設業許可の項目で説明した自己資本と全く同じ考え方で、単純にその額が4,000万円に増えると考えてください。

決算直前の試算で純資産4,000万円に届かなそうだけど、どうしても特定建設業許可がほしいという人は、期中に純資産が4,000万円に達する額を増資(資本金を増やす)という方法も考えられます。

会社設立直後の財産的基礎

一般建設業許可と同様、第1期決算前であれば、設立時貸借対照表における純資産が4,000万円以上であれば要件を満たしていることになります。つまり、会社設立直後に特定建設業許可を申請するには、設立時資本金は4,000万円以上にする必要があるということです。

許可更新時の財産的基礎

一般建設業許可と異なり、特定建設業許可の場合は5年に一度の更新審査においても直前決算における財産的基礎を満たしている必要があります。毎年提出する決算変更届ですが、特定建設業許可業者の場合は、更新直前の決算変更届において資産要件を満たしているかしっかり確認しましょう。

決算期を変更して資産要件を満たす

会社の場合は、決算期を変更して財産的基礎の要件を満たすという方法でも問題ありません。

具体的には、会社の決算期は定款で定められていいるので、まずは株主総会(合同会社の場合は社員総会)で事業年度に関する内容を変更し、その旨を税務署に届出することで決算期の変更ができます。

財産的基礎まとめ

建設業許可の財産要件は、建設事業者の経営安定性、工事施工能力を計る重要な審査項目です。まずは、一般建設業許可、特定建設業許可のどちらが必要なのかを明確にし、現時点でその財産的基礎を有していいない場合は、計画的に要件を満たせるような運営をする必要があります。

また、財産要件の都合により、はじめは一般建設業許可を取得して、将来、特定要件を満たしたところで特定建設業許可に切り替えるということも可能です。

建設事業者は、建設業許可を維持するために自社の決算内容をしっかり把握できるようにしておきましょう。

建設業許可全体の要件はこちら

行政書士法人ストレート
行政書士 大槻 卓也
執筆者

建設業特化の行政書士法人ストレートの代表行政書士。年間申請数は300件を超える。建設業者のみならず行政書士、他士業からも多くの相談を受けるプロが認める専門家。誠実、迅速な対応で建設業者の発展に貢献します。

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