経営事項審査の総合評定値P点のうち20%を占める経営状況(Y)について、どのような審査項目となっているのか、また評点計算の方法を解説します。
目次
Yの評点は8つの指標から算出される
経営状況(Y)は、会社の決算内容に基づいた経営状況を表すもので、8つの指標により構成されています。
Yの評点は以下の3つの手順で算出します。
①8つの指標を数値化する
はじめに、次の8つの指標(X1~X8)を数値化します。
数値化の方法は後ほど解説しますので、まずは全体像を確認しましょう。
- X1:純支払利息比率
- X2:負債回転期間
- X3:総資本売上総利益率
- X4:売上高経常利益率
- X5:自己資本対固定資産比率
- X6:自己資本比率
- X7:営業キャッシュフロー(絶対額)
- X8:利益剰余金(絶対額)
ややこしいですが、このX1~X8は、経営事項審査における「経営規模(X)」とは別物です。
②経営点数Aを算出する
X1~X8それぞれをの指標を数値化したら、次にその数値から下記式により「経営点数A」を算出します。
A=-0.4650×X1-0.0508×X2+0.0264×X3+0.0277×X4+0.0011×X5+0.0089×X6+0.0818×X7+0.0172×X8+0.1906
※小数点以下第3位を四捨五入
③Y評点を算出する
②で算出して「経営点数A」を次の計算式に当てはめると、「経営状況Y」の評点となります。
Y=167.3×A+583
※小数点以下第1位を四捨五入
※最低点は0点、最高点は1,595点
8つの指標(X1~X8)について
Y評点を構成する8つの指標は、「負債抵抗力」「収益性・効率性」「財務健全性」「絶対的力量」の4つの項目に分かれているので、その項目ごとに解説していきます。
1.負債抵抗力
負債抵抗力は、「金利負担能力」と「月商に対して負債総額がどれくらいか」を表すもので、純支払利息比率と負債回転期間の2つで構成されています。
純支払利息比率(X1)
純支払利息比率とは、「有利子負債から生じる支払利息」から、「貸付金を含めた金融資産から生じる受取利息・配当金」を差し引いた純金利の負担の程度を計るものです。
Yの評点に占める割合は29.9%で、数値が低いほど経営事項審査の評価でプラスになります。
売上高、キャッシュフローの増加等による借入金の返済によって数値が低くなり、逆に、売上高の減少、借入金の増加等によって数値が高くなる特徴があります。
X1計算方法
(支払利息-受取利息配当金)÷売上高×100
※小数点以下5位未満の端数は四捨五入して、百分比とする。
※数値が5.1%を超える場合は、5.1%、-0.3%に満たない場合は、-0.3%とみなす。
負債回転期間X2
負債回転期間は、月商に対して、負債総額(流動負債・固定負債)がどれくらいかを表すもので、 負債全体を捉えるため、借入金だけではなく、支払手形や工事未払金の大小によっても左右されます。
Yの評点に占める割合は11.4%で、数値が低いほど経営事項審査においてプラスになります。
支払手形等のサイト短縮化および減少、売上高の増加によって数値を低くなり、 純支払利息比率と同様、実際には売上高の増減が大きく左右されるといえます。
X2の計算方法
(流動負債+固定負債)÷売上高÷12
※小数点以下3位未満の端数があるときは四捨五入。
※計算された数値が、180を超える場合は18.0、0.9に満たない場合は、0.9とみなします。
2.収益性・効率性
収益性・効率性は、会社がどれだけの収益を、どれだけ効率的にあげているかを評価する指標であり、数値が高いほど良いとされ、「総資本売上利益率X3」と「売上高経常利益率X4」の2つで構成されています。
総資本売上総利益率X3
総資本売上総利益率は、投下資本に対して、売上から原価を引いた粗利がどれくらいかを評価するものであり、 工事の採算性の度合いや、資本の大小に左右されるため、原価管理を徹底すると共に、資本のバランスにも注意が必要です。
Yの評点に占める割合は21.4%であり、数値が高いほど経営事項審査においてプラスになります。
(X3 上限値63.6%~下限値6.5%)
X3の計算方法
売上総利益÷総資本(2期平均)×100
※小数点以下5位未満の端数は四捨五入
※総資本の額は、貸借対照表における「負債純資産合計」の額、 売上総利益の額は、法人の場合、売上総利益の額、個人の場合は完成工事総利益の額とする。総資本の2期平均の額が3,000万円に満たない場合は3,000万円と見なす。
売上高経常利益率X4
売上高経常利益率は、財務活動なども含めた通常の企業活動における売上高に対する経常利益の割合を示し、金融収支なども含めた総合的な収益力を示す指標で、業績評価の指標として最も一般的なものです。
Yの評点に占める割合は5.7%で、数値が高いほど経営事項審査においてプラスになります。
営業利益増加や借入金返済による支払利息の減少で、数値が高くすることができます。
X4の計算方法
経常利益÷売上高×100
※小数点以下5位未満の端数があるときは四捨五入
3.財務健全性
財務健全性は、会社にどれだけ自己資本があるかを評価する指標です。借金に頼らず事業を運営出来ているかがポイントで、「自己資本対固定資産比率X5」と「自己資本比率X6」の2つで構成されていています。
自己資本対固定資産比率X5
自己資本対固定資産比率は、固定資産がどの程度自己資本で賄われているかを示す指標です。返済する必要のない資本である「自己資本」が多いほど経営は安定することになります。この数値は自己資本と他人資本のバランスを評価しており、総資本に対し自己資本の比率が高いほど資本調達が健全な状態となります。
Yの評点に占める割合は6.8%で、数値が高いほど経営事項審査においてプラスになります。
X5の計算方法
自己資本÷固定資産×100
※小数点以下5位未満の端数は四捨五入
※自己資本の額は、貸借対照表における「純資産合計」の額
自己資本比率X6
自己資本比率は、総資本に占める自己資本の割合を示す指標で、資本構成から企業の安全性をみるものです。
Yの評点に占める割合は14.6%で、数値が高い方が経営事項審査においてプラスになります。
X6計算方法
自己資本÷総資本×100
※小数点以下5位未満の端数は四捨五入
※自己資本の額は、貸借対照表における「純資産合計」の額
4.絶対的力量
営業キャッシュフローX7
営業キャッシュフロー(X7 上限値15.0~下限値-10.0)寄与度5.7% 高いほどよい
キャッシュフローとは、現金主義によって計算された利益と会社の財務活動によってもたらされる「お金の増減」のことです。
発生主義による利益に比べると操作性が排除されるため、企業の実体が正確に反映される言われています。
Yの評点に占める割合は5.7%で、数値が高いほど経営事項審査においてプラスになります。
X7の計算方法
経常利益+減価償却実施額+貸倒引当金増加額-法人税・住民税及び事業税-売掛債権増加額+仕入債務増加額-棚卸資産増加額+未成工事受入金増加額
※売掛債権=受取手形+完成工事未収入金
※仕入債務=支払手形+工事未払金
※棚卸資産=未成工事支出金+材料貯蔵品
※小数点以下5位未満の端数は四捨五入
利益剰余金X8
上限値100~下限値-3.0) 寄与度4.4% 高いほど良い
企業の経営活動から生じた利益の積立部分に焦点を当てたもので、 自己資本のうち、企業に投下された払込資本以外の利益剰余金は、企業が自由に運用できる資金の源泉であり、真の体力を反映する指標であるとされています。
Yの評点に占める割合は4.4%で、数値が高いほど経営事項審査においてプラスになります。
X8の計算方法
利益剰余金÷1億
※小数点以下3位未満の端数は四捨五入
Yの評点を算出する
上記X1~X8指標を「経営状況点数A」に集約し、さらにその点数AからY評点を算出します。
経営状況点数Aの計算方法
X1~X8の3つの指標の点数を確認したら、次の計算式に当てはめて「経営点数A」を算出します。
Yの評点計算方法
上記の通り算出した経営状況点数Aを下記式に当てはめて、Y評点を計算します。