技術職員数及び元請完成工事高(Z)は、経営事項審査の総合評定値(P)の評点において25%を占める重要なポイントです。
建設事業者の技術力の評価するための項目であり、「国家資格者の在席人数」や「元請としてのマネジメント能力」を計るものとなっています。
目次
技術職員の評価
技術職員の評価は、建設技術系国家資格保有者と、一定以上の実務経験者の人数が評点に反映される仕組みで、当然その人数が多いほど評価は高くなります。
また、人数だけではなく、実務経験者よりも有資格者を、さらに有資格者の中でも一級資格者に高得点が付くような設計です。
技術職員の常勤
技術職員数の評価対象となる職員は、経営事項審査を申請する事業者において、審査基準日以前から6ヶ月を超えて継続的に常勤している人のみが加点の対象となります。
この6ヶ月前とは、審査基準日の6か月前の1日前の時点から継続して常勤であることが求められるので注意しましょう。
例えば、9月30日決算の会社の場合、その6ヶ月前である4月1日の1日の3月31日から常勤でないといけません。
常勤性の証明方法
経営事項審査において、加点となる技術職員の継続的な常勤性は、社会保険の標準報酬決定通知書にその人の名前があるかどうかで判断される場合がほとんどです。
技術職員のカウント方法
経営事項審査では、専門工事の業種ごとに得意分野を適切に評価するため、技術者一人あたりのカウントを2業種までに制限されているため、一人で複数の国家資格を有している資格者も、どの業種にカウントするかを戦略的に考える必要があります。
例えば、土木施工管理技士と建築施工管理技士の両方の資格を保有する人が、土木施工管理技士に基づいて「土木工事業」と「舗装工事業」にカウントする場合、「建築工事業」へのカウントはできなくなります。
技術職員の配点
技術職員は、その資格等のレベルに応じて次の表のとおり付与点数が定められています。
基幹技能講習修了者で一級資格者以外の者3点
一級資格者かつ監理技術者講習修了者 | 6点 |
---|---|
一級資格者・技術士 | 5点 |
二級資格者 | 2点 |
その他の資格者 | 1点 |
技術職員の資格区分
上記で、技術職員の資格に応じた配点は5段階であると説明していますが、あくまで大きなくくりのもので、正確には資格の種類や等級ごとに配点が細かく定められています。
経営事項審査における技術職員の評価対象となるのは、次のリンク先にある区分表のとおりです。
この表から、保有している資格が評価の対象となるのか、また、その配点を確認してから経営事項審査の申請を進めましょう。
出向社員も評価対象となる
経営事項審査における技術職員数の加点には、出向社員も含めることができます。
出向社員の継続的な常勤性証明については、通常の技術職員の場合と異なり、次の3つの書類をもって証明することが多いです。
- 出向覚書または出向協定書等
- 出向元の社会保険標準報酬決定通知書等
- 出向社員の給与精算状況確認資料等
具体的な証明、確認資料は審査庁ごとに異なるので、それぞれの申請先行政庁が発行している手引きをしっかり確認し、不明な場合は事前に問い合わせる必要があります。
出向社員の技術職員に関する注意点
資格を有している出向社員は技術職員数として経営事項審査の加点対象になりますが、工事現場に配置すべき主任技術者や監理技術者になることはできないので注意しましょう。
一方、建設業許可における専任技術者は出向社員でも就任することができます。
複雑な技術者制度ですがしっかり整理しておきましょう。
技術職員数評点の計算方法
上記のとおり、経営事項審査を受ける業種ごとに、技術職員の数と付与される点数から業種ごとに集計した数値を、次の表の★の箇所に当てはめることで技術職員数評点を算出できます。
15,500以上 | 2,335 |
11,930~15,500未満 | 62×★÷3,570+2,065 |
9,180~11,930未満 | 63×★÷2,750+1,998 |
7,060~9,180未満 | 62×★÷2,120+1,939 |
5,430~7,060未満 | 62×★÷1,630+1,876 |
4,180~5,430未満 | 63×★÷1,250+1,808 |
3,210~4,180未満 | 63×★÷970+1747 |
2,470~3,210未満 | 62×★÷740+1,686 |
1,900~2,470未満 | 62×★÷570+1,624 |
1,460~1,900未満 | 63×★÷440+1,558 |
1,130~1,460未満 | 63×★÷330+1,488 |
870~1,130未満 | 62×★÷260+1,434 |
670~870未満 | 63×★÷200+1,367 |
510~670未満 | 62×★÷160+1,318 |
390~510未満 | 63×★÷120+1,247 |
300~390未満 | 62×★÷90+1,183 |
230~300未満 | 63×★÷70+1,119 |
180~230未満 | 62×★÷50+1,040 |
140~180未満 | 62×★÷40+984 |
110~140未満 | 63×★÷30+907 |
85~110未満 | 63×★÷25+860 |
65~85未満 | 62×★÷20+810 |
50~65未満 | 62×★÷15+742 |
40~50未満 | 63×★÷10+633 |
30~40未満 | 63×★÷10+633 |
20~30未満 | 62×★÷10+636 |
15~20未満 | 63×★÷5+508 |
10~15未満 | 62×★÷5+511 |
5~10未満 | 63×★÷5+509 |
5未満 | 62×★÷5+510 |
※小数点以下は切り捨て
元請完成工事高の評価
元請完成工事高は、公共工事だけでなく民間工事も含めて、注文者から直接請負った工事の完成工事高のことをいいます。
公共工事の元請業者に求められるマネジメント能力を評価する観点から審査項目に加えられています。
技術職員数と元請完成工事高をあわせて「Z」といいますが、Z内での内訳は、「技術職員数4:元請完成工事高1」と、技術職員数と比べるとウェイトが低く設定されています。
元請完成工事高の評価は、直近2年または3年の平均で行われますが、これは完成工事高(X1)で選択したパターンと連動するので、独自に選択することができません。
元請完成工事高評点の計算方法
元請完成工事高の評点は、経営事項審査を受ける業種ごとの元請完成工事高1,000円未満の端数は切り捨てたうえ、次の表の★の箇所に当てはめて算出します。
1,000億円以上 | 2,865 |
800億円~1,000億円 | 119×★÷20,000,000+2,770 |
600億円~800億円未満 | 145×★÷20,000,000+2,166 |
500億円~600億円未満 | 87×★÷10,000,000+2,079 |
400億円~500億円未満 | 104×★÷10,000,000+1,994 |
300億円~400億円未満 | 126×★÷10,000,000+1,906 |
250億円~300億円未満 | 76×★÷5,000,000+1,828 |
200億円~250億円未満 | 90×★÷5,000,000+1,758 |
150億円~200億円未満 | 110×★÷5,000,000+1,678 |
120億円~150億円未満 | 81×★÷3,000,000+1,603 |
100億円~120億円未満 | 63×★÷2,000,000+1,549 |
80億円~100億円未満 | 75×★÷2,000,000+1,489 |
60億円~80億円未満 | 92×★÷2,000,000+1,421 |
50億円~60億円未満 | 55×★÷1,000,000+1,367 |
40億円~50億円未満 | 66×★÷1,000,000+1,312 |
30億円~40億円未満 | 79×★÷1,000,000+1,260 |
25億円~30億円未満 | 48×★÷500,000+1,209 |
20億円~25億円未満 | 57×★÷500,000+1,164 |
15億円~20億円未満 | 70×★÷500,000+1,112 |
12億円~15億円未満 | 50×★÷300,000+1,072 |
10億円~12億円未満 | 41×★÷200,000+1,026 |
8億円~10億円未満 | 47×★÷200,000+996 |
6億円~8億円未満 | 57×★÷200,000+956 |
5億円~6億円未満 | 36×★÷100,000+911 |
4億円~5億円未満 | 40×★÷100,000+891 |
3億円~4億円未満 | 51×★÷100,000+847 |
2億5,000万円~3億円未満 | 30×★÷50,000+820 |
2億円~2億5,000万円未満 | 35×★÷50,000+795 |
1億5,000万円~2億円未満 | 45×★÷50,000+755 |
1億2,000万円~1億5,000万円未満 | 32×★÷30,000+730 |
1億円~1億2,000万円未満 | 26×★÷20,000+702 |
8,000万円~1億円未満 | 29×★÷20,000+687 |
6,000万円~8,000万円未満 | 36×★÷20,000+659 |
5,000万円~6,000万円未満 | 22×★÷10,000+635 |
4,000万円~5,000万円未満 | 27×★÷10,000+610 |
3,000万円~4,000万円未満 | 31×★÷10,000+594 |
2,500万円~3,000万円未満 | 19×★÷5,000+573 |
2,000万円~2,500万円未満 | 23×★÷5,000+553 |
1,500万円~2,000万円未満 | 28×★÷5,000+533 |
1,200万円~1,500万円未満 | 19×★÷3,000+522 |
1,000万円~1,200万円未満 | 16×★÷2,000+502 |
1,000万円未満 | 341×★÷10,000+241 |
※小数点以下は切り捨て
技術職員数及び元請完成工事高(Z)の計算方法
技術職員数、元請完成工事高それぞれの評点を上記のとおり計算したら、これらを次の計算式に当てはめてZ全体の評点を算出します。
技術職員数及び元請完成工事高の評点アップ対策
経営事項審査のZは、短期的な対策での評点アップが難しい項目なので、中長期的な視点を持って、以下のような対策を着実に実施していくしかありません。
- 職員が国家資格を取得する
- 国家資格者を継続的に採用する
- 保有資格を上位資格にレベルアップ
- 監理技術者講習を受講する
- 下請体制から元請体制にシフトする
もちろん、M&Aや資格者の大量採用という方法であれば、短期的に評点をアップさせることは可能ですが、技術職員は審査基準日の6ヶ月と1日前から継続した常勤性が必要なので注意しましょう。